内容説明
源義経らの活躍で源氏が勝利し、鎌倉幕府の成立史として語られる源平合戦を、敗れた平氏の視点から描くと何が見えてくるのか。『平家物語』を中心に、富士川から壇ノ浦にいたる経過を、在地勢力の動向とそれら集団のもつ性質を解き明かしつつ詳述。軍事制度の変遷、武人としてのあり方の違い、後白河院の関与、戦争目的の変化など、多方面から描く。
目次
平氏からみた治承寿永の内乱―プロローグ/東国の喪失(勝算なき富士川の戦い〈頼朝・義仲の挙兵/儀礼となった追討使派遣/苦難の旅となった東国下向/甲斐源氏の攻勢/富士川合戦の虚実/壊走〉以下細目略/近江・美濃の消耗戦/養和元年の北陸合戦)/平氏都落ち(北陸道の喪失/七月二十五日/それぞれの都落ち)/一ノ谷合戦(西海での勢力回復/生田の森の戦い/悲劇となった浜の戦い)/屋島・壇ノ浦の合戦(山陽道の戦い/屋島の戦い/壇ノ浦の戦い)/平氏の人々が遺したものとは―エピローグ/治承寿永の内乱年表
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ようはん
21
平家の視点による源平合戦の実態。平家軍はそこまで弱くないイメージがあり、実際に水軍においては船上での間合いを取った遠矢攻撃で坂東武者を苦しめていた事が分かる。しかし富士川の戦いの事前段階で情報収集に欠け頼朝挙兵を軽く見てしまい出発の遅延や経験不足の維盛を総大将にする等、数多くの判断ミスを犯してしまっているのが痛い。その後の平家側自体は持ち直す事はあっても割と離脱者や裏切りを出しているのを考えると絶対優勢が崩れた富士川の戦い関連がターニングポイントだった印象。2020/11/03
ゆの字
5
タイトルほど平氏側の視点ではなかったけど、それぞれの戦の詳細な流れがリアリティをもって理解できた。それだけに地図が見辛かったのは残念。読み進めるうちに、押されていく平家の様子が胸に迫って辛くなってしまった。平家といえば、一門まるごと家族なイメージだったけど、分家という言葉が新鮮で、源平合戦における平家の見方が一変した。それぞれに軍を率いていたのね。それにしても、梶原景時の名前を見ただけで嫌な印象を抱いてしまうのは、永井路子の読みすぎか。2020/12/29
餅屋
4
平氏視点からみた治承寿永の内乱。以仁王の挙兵に始まる皇位継承戦争を安徳や北陸宮を抑えて後鳥羽支持派が勝利した。後白河の思惑では、平氏を滅ぼすことよりも三種の神器を確保して後鳥羽の正当性を担保することにあり、都落ち後も和平の機会は何度もあった。国衙で大動員はできるものの適切な大将軍の選定ができず、東国や北陸への追討使には分家を押出し敗北、最終的に池殿・小池殿といった分家は離脱した。三年続いた全国でなく西国の飢饉が痛かった?玉を握っているゆえか、賊軍ではなく復帰する手立てが立たずの時間切れか?(2018年)2022/02/21
Kazuya Nakagawa
3
永井さんの歴史書には何とも言えない読了感がある。2022/12/08
wang
3
平氏側から時代を読む。すると、公家政権から武家政権へ、平氏から源氏へというのが歴史の必然による流れではなく、いくつもの偶然の結果そのような歴史ができあがったのであって、そうでない歴史への可能性はいくつもあった。後白河上皇の思惑や、頼朝の意図した政権構想では平氏が生き残る選択肢はいくつもあった。当初、西日本の飢饉と東日本の豊作という経済的背景があった。軍編成が家人との人的結びつき、古参・今参(いままいり)か馳武者・国衙軍か。平家の武将が名誉の戦死を望み、人的資源を浪費したこと。一ノ谷合戦の想定外の大敗。2021/01/05




