内容説明
第二次大戦後、連合国が日本の戦争責任を追及した「東京裁判」。膨大な被害を生んだ日本の戦争を、法廷はどのように裁いたのか。帝国主義・植民地主義・レイシズム(人種差別)といった発想と裁判審理との関わり、今日の歴史認識問題にもつながる戦争観を重視しつつ、膨大な史料を用いて裁判を再検証。不可視化された戦争被害の諸相に迫る。
目次
近代日本の戦争と東京裁判―プロローグ/裁きへの道(日本の戦争と欧米諸国の怒り/戦争責任の追及と国際検察局の始動/尋問の諸相/重視された被害と軽視・無視された被害)/「第二の戦争」―日本側の裁判対策(裁判対策の開始/交差する戦争観―陸軍・海軍・外務省の確執/弁護団の内部対立/進行する陸軍・海軍・外務省の裁判対策)/法廷での攻防(始まった検察側の立証/検察側の立証と日本軍の残虐行為/弁護側の反証/審理と陸海軍/審理と外務官僚)/下された判決(判決書と日本の戦争、残虐行為/判決書と陸海軍、外務省/問われざる問題群と責任者/勝者と敗者の負の連関性)/サンフランシスコ平和条約と戦後日本―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
東京には空がないというけれど・・・
5
東京裁判は、映画やドラマ、ドキュメント映画まで見ていた。しかし、この本は、それらに描かれていない本質的問題を指摘している。戦前、戦中の日本の戦争責任の根幹、組織的問題、アジアへの責任などよりも、フィリピン・ビルマなどの戦地での白人捕虜への虐待、陸軍の責任だけが重点的に追及された。一方、外務省や海軍の責任回避は日本の弁護団の作戦がうまくいった。全体的に欧米人による植民地主義を肯定する形で裁判が進み、判決が下されたこと。真珠湾攻撃、南京大虐殺などは軍事的政治的理由で見送られ、東西冷戦で早めに終結したこと。2022/08/07
Go Extreme
1
日本の近代戦争の背景: 戦争と暴力の時代ー明治時代から戦争が支配し「大日本帝国」として成長 主な戦争の経過: 日清戦争で初勝利 日露戦争で国際的地位向上 戦争の影響と被害: 戦争中の性暴力や人道犯罪が多発・慰安婦問題が「不可視化」 東京裁判の意義と問題点: 戦争責任を問う裁判・加害者と被害者の認識再検証。 性暴力や慰安婦問題が無視・男性中心に進行 戦争を自衛戦争として正当化 現代への影響: 戦争認識や慰安婦問題の再考・被害者の声を大切に 社会の構造と戦争観ー歴史認識は今も続き、暴力を容認する構造存在2025/02/11
ジャケット君
1
本書に関しては、裁判のおける弁護側の主張を日本の第二次世界大戦の歴史と追随して知りえた。ニュルンベルクが先例となりA・B・Cと分かれたが、C級に至ってはナチ特有のユダヤ人根絶と言った特定の民族浄化であったため、雑食に敵地の民間人を殺害してきた日本軍には国際裁判には不適切であり、事後法の性格もありこれで起訴されなかった。パル判事が筆頭にA級の裁判証拠は国際司法の場で未成熟であったが起訴される。判事の長い時間を要した意見対立が功を奏したのかA級では絞首刑がでなかった。でも私はA級ー共同謀議ーを犯罪概念として2024/06/28
カラコムル711
1
東京裁判については粟屋憲太郎、日暮?延、戸谷由麻氏の本を読んだが、この本でまた新たな問題を教えられた。裁判前から講和までを対象にし、特に裁かれなかった視点、アジアの側、植民地側などの欠如を指摘しているのは同感。残虐行為が白人捕虜問題に特化されているとの指摘は従来見逃していたことだった。日暮、戸谷氏が国際法の観点から書いてあるのに対し広く歴史分析として書いてある。粟屋氏の観点に近い。誰が読んで理解できる良書。 2018/09/29
ホンドテン
0
図書館で、TIMTの初歩理解にと書架から抜く。被害者の優先序列(裁判のみならず講和条約締結も)というの著者の視点はその後の深化、発展性への評価という意味でヴァインケ/板橋(2006/2015)と共通している。まぁ植民地現地民の損害なんぞと思う向きもあろうが、203pの裁判所内待遇ってまんまそれの具現化なんだよな。初歩理解という点では裁判訴因一覧と判決一覧の図は有益か、第一回逮捕令リストに驚いた。個人的には著者の本領、潜水艦事件からダグスタントン(2003)の記述に今更得心がいった。2020/08/20
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