内容説明
細川家熊本藩主の初代、細川忠(ただ)利(とし)。戦国武将忠(ただ)興(おき)を父と仰ぎ、明智光秀を祖父に持つ初期幕藩体制下のエリートは、戦国動乱から「天下泰平」の確立へ転換する日本史上最大の変革期の渦中でいかに育ち、統治者として自己を形成していったのか。忠利による国づくりのあり方を通して、彼ら「ポスト戦国世代」の歴史的使命を探り、激動の時代を読み解く。
目次
ポスト戦国世代とは―プロローグ/波乱の家督相続と国づくり(誕生から家督相続へ/国づくりのはじまり―代替りの改革)/豊前・豊後での奮闘 国主としての試練(三斎・忠利父子の葛藤/百姓・地域社会と忠利/寛永の大旱魃と領国・家中)/肥後熊本での実践 統治者としての成熟(熊本への転封と地域復興/肥後における統治の成熟/「私なき」支配から「天下」論へ)/細川家「御国家」の確立 「天下泰平」のもとで(島原・天草一揆と「天下泰平」/忠利の死と熊本藩「御国家」)/「天下泰平」と忠利―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ようはん
17
明智光秀の孫にもあたる熊本藩主細川忠利の領国経営がテーマ。本書では忠利を戦国時代から江戸時代への転換期を生きたポスト戦国時代の代表格としているが、清正死後に荒廃した熊本領の再興と新たな農村支配の構築に旧時代の象徴ともいえる父忠興とその隠居領家臣団一派らの対立等、転換期特有の領国経営の難しさを感じさせる。2020/11/05
MUNEKAZ
15
細川忠利を主役に、戦国から太平の世への移り変わりを目指す苦闘を藩レベルで追った一冊。一揆の勃発を抑えるため百姓救済の実施と役人の私欲を戒め、隠居した父・忠興とは権力の一元化を巡って暗闘を繰り返す。啓蒙君主のごとき忠利の意識の高さ、統治者としての自覚の強さに驚かされるが、それは前の肥後藩主・加藤家のような改易や島原・天草の乱といった破局が常に待ち受けている近世初期の不安定さ故か。また父・忠興との比較を通して、武士の意識の変化というかジェネレーションギャップも垣間見えて面白い。2018/07/30
アメヲトコ
8
戦国から天下泰平の時代に移るなかでの殿様の苦闘を描いた一冊。忠利直筆の文書が写真入りで多数紹介され、家老の諌言に対してキレ気味に答えている箇所などは人間らしさがあります。忠利の時代に細川家は小倉から熊本に転封となるのですが、ポスト戦国体制の構築に成功した細川家と失敗した前任の加藤家との対照も印象的です。2019/09/15
フランソワーズ
7
副題の通り「ポスト戦国世代」の使命。地味ながら、相当困難な事業を追っています。そして戦国の気風は武家のみならず、凡下にも残っており、その対処に苦慮する藩主の姿が克明に著述されており、いかにして”時代”を克服したか、具体的にわかります。さらには隠居の父三斎忠興との関係はまさに世代間格差を感じさせずにいられません。その父より先に亡くなったのはストレスのせいとしか思えない。気の毒ですね。2021/11/07
金監禾重
6
細川忠興と連携して大名細川家を確立した跡継ぎ、程度の認識しかなかった。本書ではまったく存在感が異なり、忠利は戦のない新時代の統治者として、領民を「つぶれ」させない統治を目指し、様々な困難と格闘する。まず隠居した父忠興が強大な妨害者である(相続前に行政を停滞させ、行政文書を持ち去り…書ききれない。さらに忠利より長生きし、代替わりに際して家中を混乱させる)。天候不順も続く。これを参勤交代しながら、奉行への委任や遠隔指示で行う。加藤家取り潰しによる肥後への移封も加増ではあるが、もちろん単純な褒美ではない。続2021/06/19




