踏絵を踏んだキリシタン

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¥1,980
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踏絵を踏んだキリシタン

  • 著者名:安高啓明
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 吉川弘文館(2022/03発売)
  • ポイント 18pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784642058698

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内容説明

キリスト教信者摘発のために始まった絵踏は、なぜ形骸化し年中行事となったのか。絵踏が行なわれていた長崎をはじめ九州諸藩が抱える事情や作法・形態・手順、踏絵素材の変更などを明らかにし、キリシタン捜索手段から信者でないことを証明する手段への変容過程を探る。悲劇的文脈で語られてきた従来の絵踏観に一石を投じ、潜伏キリシタンの姿に迫る。

目次

踏絵なのか、絵踏なのか―プロローグ/日本キリスト教史のなかの禁教史(キリスト教伝来と布教活動/禁教令の起源と展開/宗門改と絵踏/潜伏キリシタンの露顕/修好条約締結と禁教政策の緩和)/禁教政策の最前線の長崎(長崎の二つの支配体制/踏絵の主題と図像/長崎奉行はどのように踏絵を管理し、実施したのか)/踏絵を所持した藩 小倉藩・熊本藩(禁教・宗門改を特別視しなかった小倉藩/踏絵の〝質〟にこだわった熊本藩)/踏絵を借りた肥前国の藩 平戸藩・福江(五島)藩・島原藩・大村藩(踏絵の貸与をめぐるロビー活動をした平戸藩/借りた踏絵を失くした福江藩/島原天草一揆の呪縛と島原藩/郡崩れの経験が転機となった大村藩)/踏絵を借りた豊後国の藩と預かり地 豊後国七藩・天草・五箇荘(キリスト教色の強かった豊後国七藩/絵踏と影踏が交錯する天草/〝辺境の地〟五箇荘で絵踏を行なうには)/外国人と踏絵(絵踏は海外でどのように紹介されていたのか/絵踏を強要された唐人とされなかったオランダ人/漂流民への絵踏/絵踏を描いた川原慶賀とシーボルト)/明治以降の踏絵(〝負の遺産〟踏絵の移管事情/踏絵の陳列・公開とキリシタンブーム/踏絵の文学作品『沈黙』とその世界観)/踏絵の持つ意味―エピローグ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

MUNEKAZ

5
初期は実際の聖具を使っていた踏絵が、長崎奉行所作成のレプリカに置き換わったのを転機に、キリシタンの「捜索」から非キリシタンを証明する「行政手続」へと変わっていく様子が描かれている。「踏絵をした」というのが禁教の前提であり証明となるのだから、潜伏キリシタンが発見されても、「異宗信仰者」として処分されるというのは実に官僚的対応。また長崎奉行所が踏絵の自作を許さず「貸す」ことで、北九州諸藩へのプレゼンスを高めていたという指摘も面白い。キリシタンの悲劇ではなく、かつてあった制度の「踏絵」が理解できる良書。2018/07/04

金監禾重

4
絵踏み(変換候補に出ない)について、知らないことが多かった。全国ではなく特にキリシタンの多かった西国で、また長崎奉行所から借り出した絵で藩が行っていた。当然実態は様々で、幕府に忠実な印象のある小倉藩は独自の絵を所持し、幕府が止めたあとも続けたという。藩によっては病人の絵踏みを免除したり強制したり。免除を献金の特典とした藩もある。民衆はというと、出店が並んだり、出かけついでに買い物したり、ハレのイベントとして楽しんだ者もいた様子が禁令から読み取れる。2021/11/30

みさと

2
江戸幕府のキリスト教禁教政策のシンボルである絵踏。実施されていた藩では、武士・町人・百姓とすべての人を対象としたもので、重要な行政手続きであった。長崎奉行は踏絵の貸与を通じて九州諸藩に対する支配を確立するなど、政治上の重要な要素であった。ところが、言わば年中行事と化し、絵踏の実施のために人が集まるため商人が集まって市が立っていたとか、絵踏によって名目的にはキリシタンはいないことになっていたので信者が摘発されても名目を重視して処分がなされないとか、一筋縄ではいかない意外な現実がそこにはあった。 2018/12/07

onepei

2
いろいろ裏があったようで興味深い2018/09/24

露傍の石

1
面白かった。キリシタンの側にも為政者側にも、時によってはある程度実態社会との折り合いをつけた発想があった事が興味深かった。明治初期の踏絵に対する扱いの変化も面白い。ただ、会津藩における踏絵について殆ど記述が無かったのが惜しい。なぜ北九州意外では会津だったのか、それが知りたいのに。2019/08/21

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