内容説明
鯨とともに生きてきた “鯨(くじら)人(びと)” 六人の聞き書きを通して、日本社会における捕鯨と鯨食の多様な関係性を明らかにする。江戸時代の鯨食文化から戦後の「国民総鯨食時代」、鯨肉が「稀少資源化」した現代にいたるまで、捕鯨と鯨食の変遷を、近世から現代の料理書に触れつつ、高度経済成長を契機とした生活様式の移りかわりに位置づける、注目の一冊。
目次
個人史と同時代史―プロローグ/鯨を捕る(鯨ど海に取り憑かれたんだっちゃ/鯨はすべてでした/百姓どころでね。銭んこ、とらなきゃ)/鯨を商う(それじゃあ、プロの仕事やない/こんなに美味しいものは、ほかにない/鯨一頭食べる会、またやりたいな)/鯨で解く(鯨革命と捕鯨の多様性/銃後の鯨肉―伝統食か、代用食か?/国民総鯨食時代―マーガリンと魚肉ソーセージ/稀少資源化時代の鯨食文化―サエズリの伝播と鯨食のナショナル化)/クジラもオランウータンも?―エピローグ/日本における近代捕鯨一一〇年の歩み
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
5
捕鯨と鯨肉の生産販売に携わってきた6人の「鯨人」への聞き取りをふまえて日本の鯨消費について考察した一冊。方言までも再現した聞き取りには何より臨場感があり、内容も非常に面白い。また商業捕鯨から調査捕鯨への転換が、代用品としての鯨から、代替不能な鯨利用への追求をもたらしたという指摘にも目を啓かされました。いわばポスト鯨世代にあたる私としては大きな断絶に気づかされもするのですが。2017/08/28
もけうに
3
鯨に関わる仕事をしてきた人たちの臨場感ある語りが面白い。働くって大変だなあとしみじみ。漁業は本当にキツそうだ…。2019/07/29
in medio tutissimus ibis.
3
昭和初期に生まれ鯨で生計を立ててこられた人々六人の生の声と、著者による同時代のクジラに纏わる産業や文化の概説の二部仕立て。クジラを様々な鯨の長所(?)をパッチワークした「スーパーホエール」としてむやみな保護をするのではなく、また時代や地域による差異を無視して漠然と「日本の伝統」とするのでもない、生きた(消費されるのだから当のクジラは当然死ぬのだけれど)鯨文化の実像に迫り、時代に合わせた再生産をする試み。語り手も著者もおいしそうに語るので鯨が食べたくなる。この時代、鯨油と冷蔵庫の重要性が思った以上にでかい。2019/04/10
カステイラ
2
鯨類を捕る人、解体する人、加工する人、売る人、鯨類料理を作る人。彼らの個人史を読む内に日本人と鯨類の関わりがいかに深かったか、商業捕鯨から調査捕鯨に変わる中でいかに縁遠いものになってしまったかが染み渡るように分かる本だった。本の半分は聞き書きで、引用元の多くが新聞記事だから、読みやすく、当時の臨場感が伝わってくるので鯨類の知識がなくても大変読みやすい。スーパーホエールなどいない、クジラといっても色々あってそれぞれのクジラにそれぞれの生態・文化があるという当たり前ながらつい忘れてしまうことを再認識できた。2017/06/18
takao
1
ふむ2021/05/07