内容説明
持続可能な社会を目指し、いま注目されている里山。それを創り出した古代人は、森林資源といかに関わり、木材から道具を作り出し生活していたのか。用途やサイズに合った樹木の使い分け、鍬などの農具の伝播、権力者による威儀(いぎ)具(ぐ)の利用、「専業工人」の出現など、考古学の視点から解明。〝木の国〟日本の古代史像を、木材の利用を通して描き出す。
目次
持続可能な社会をめざして―プロローグ/森と生きる(森と人とのかかわり〈森と集落の関係性/弥生~古墳時代の「里山」の植生を復元する/木取りから推定する/樹齢から林相を復元する/近世木地師の巡回サイクルとの類似/森が再生するペース/里山(雑木林)の創出〉以下細目略/木材の流通を復元する/木製品には何があるのか)/鍬は語る(鍬の機能を考える/鍬の系譜と伝播)/首長と王の所有物(みせびらかす器、隠匿する器/儀杖から武器へ)/うつりゆく木製品(精製木製品の変遷/専業工人の出現と展開)/弥生~古墳時代に「林業」はあったのか?―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
花林糖
16
(図書館本)里山を作り出した古代人(弥生時代~古墳時代)が、森林資源との関わりや、切り出した木材をどの様に活用していたのか。農具や威儀具など遺跡からの出土品を用いて説明している。他社から出版された論文を一般向けに出された本なので、この方面に多少知識がないと読みづらいかも。2016/10/22
こぽぞう☆
15
遺物として残りにくい木材に特化した原始〜古代史。論文を元にしただけあって難しいが、最後の三章ほどで簡単にまとめてあったのでなんとか。「みせびらかす器、隠匿する器」が面白かった。2017/02/21
もるーのれ
6
木製品の概要から始まり、里山の様相から首長・王の持ち物、木製品の工人の存在形態と、木製品1つとっても様々な視点から描かれる弥生・古墳時代像が分かり易い。平易な文章でありながらも結構専門的な内容。個人的には、首長や王の持ち物についての論が興味深かった。特に弥生時代の「隠匿する器」と「見せびらかす器」。性格は違えど豪奢な造りで首長層の持ち物には相応しいし、その性格が材質を変えて古墳の副葬品として生き残っていくのが面白い。木製品はこれまであまり触れてこなかった(寧ろ面倒臭がってた)けども、見方が少し変わった。2021/11/23
どら猫さとっち
6
古来、日本は樹木とともに生きてきた。本書は弥生から古墳時代まで、古代の人々の樹木を活用した情景を、発掘した物を基づいて描き出した。古代史にはあまり詳しくないが、木材と人間との関わりが、古来から根づいてきたことを本書で証明している。そして、古代の人々の営みが、現代人にも似通っている箇所もあり、里山資本主義のルーツが弥生時代からあったことも興味深い。今の我々にも必要な一冊。2016/09/25
さとうしん
5
一見地味なテーマだが、各地の木製品の生産と流通の状況、王権との関わりなど、木製品に着目することで見えてくるものは多いのだなと思った。容器のところで白川静の言う「サイ」を絡ませているのも面白い。2016/10/27
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