内容説明
戊辰戦争から西南戦争、日清・日露戦争などを経るなかで、御簾の奥に座していた天皇は大元帥に、その血族である有栖川宮や伏見宮ら皇族は軍人となった。戦時のみならず平時も軍人としてふるまうようになった天皇や皇族、華族軍人や朝鮮王公族。その動向を詳細に追い、いかに自己変革を遂げ、天皇制軍隊の創設に貢献をしてきたのかを解き明かす。
目次
国民が戦場に向かうアイデンティティとは―プロローグ/宮廷と武家(朝廷の幕末/「宮さん宮さん」/公家たちの戊辰戦争/大元帥・天皇の誕生)/ノブレス・オブリージュ(軍事化する宮廷/騒擾と鎮圧/軍人化する皇族/はかどらない華族の軍人化)/日清・日露戦争と宮廷(戦争と皇室/出征する皇族軍人たち/后妃と戦争/軍人の華族化)/大日本帝国の完成と次世代への負担―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
5
皇族や公家が戊辰戦争の総督・参謀などに押し出され、若い頃の西園寺公望が「やんちゃ」だったという話を見ると、何となく幕末の皇族・公家の立ち位置が南北朝時代のそれとかぶるように思える。あとは西南戦争が皇族・華族のノブレス・オブリージュ実践のはしりとなったこと、皇族の軍人化に対して華族の軍人化が思うように進まなかった点などが興味深い。2016/06/19
高木正雄
4
明治天皇が自ら演習を指揮したというのは初めて知った。公家と諸侯が軍に入りたがらないのは、やはり封建的な名残がある明治のはじめに将校への道を平民に開けたことによるのではないだろうか。それに比べるとドイツは帝政時代から貴族の将校が多いというのも比較すると面白そう。所謂軍人華族の子弟も軍への道を志した人は少ない。有栖川宮の軍歴はすごい。こういう話だと王公族や朝鮮貴族は省略されがちなので、紹介されただけでも嬉しい2024/02/03
onepei
1
これも武士の世から明治の新時代に入ったということだったのだろうか。2016/06/22
秋津
1
明治時代を中心として、国民皆兵のシンボルとしての天皇、そして皇族や華族の軍事的な役割について考察した一冊。上層階層の国家への軍事的な貢献という課題、日清・日露戦争を契機とした「軍人の華族化」の進展といった観点から、創設期の日本陸海軍の在り方を興味深く読みました。士族が徴兵軍に敗北したというだけではなく、皇族や華族の傷病者の慰問、日本赤十字の前身となる博愛社の設立など、西南戦争が「ノブレス・オブリージュ」の実践の場となったというのは面白いなと。2016/06/17