内容説明
天皇が居住し、宮中でさまざまな公務が行われる皇居。現在のように一般参賀や参観で、国民が訪れることができるようになったのはいつ頃からか。明治の宮城拝観から占領下の勤労奉仕団、皇居移転論や遷都論、宮殿再建へ。「国民との近さ・親しみ」と「伝統・権威」の間で揺れ動く皇居の歴史を辿り、現在の皇室像がどのように形成されてきたかを考える。
目次
現在の皇居―プロローグ/戦前の皇居 開かれ、そして閉じる(東京への奠都と宮殿の造営/拡大する宮城拝観/閉じていく宮城―戦争遺家族と御府)/占領下の皇居 ナショナリズムの表象として(皇居勤労奉仕団の誕生/遷都論と宮城移転論の登場/開放される宮城・皇居/皇居再建運動の展開)/開かれはじめる皇居(二重橋事件の衝撃/皇居参観の拡大/皇居造営の予備調査)/御苑を開放し、宮殿をつくる(遷都・皇居移転論と皇居開放論の再燃/宮殿造営にむけて/その後の皇居)/イギリスとの比較―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
3
王を隠して神秘化するか、見せて演出するか。日本の伝統的な君主観は圧倒的に前者であったから、皇居開放をめぐる論議は天皇像の質的な転換を伴うはずなのだが、その辺りの目配せが乏しかったのは残念。開く量の多寡を論じるだけで終わってしまっている。英王室との比較も小手先としか感じられなかった。2021/12/16
アメヲトコ
3
戦前の宮城から戦後の皇居へ、閉ざす方向と開く方向の二つの流れのせめぎ合いに、皇室が国民にどのようなイメージを演出しようとしたかを追った本。戦後にたびたび主張された皇居移転案、読売がとくに熱心だったという事実が今からすると面白いです。2016/05/11
SK
2
112*明治以降の臣民・国民と、皇居。おもしろかった。戦争で焼け落ちた明治宮殿と、それが再建されるまで。遷都・皇居移転論なんてのがあったんですね。2019/04/16
秋津
1
東京奠都、大正デモクラシー、戦争・敗戦など近現代日本の体験に際し、何故皇居(宮城)が国民に対して開かれ、また閉ざされてきた事実を踏まえ、皇室と国民の関係について考察されています。 戦前における宮城拝観を通じた天皇・国家への権威付けも、戦後における皇居開放や「新生日本」建設に向けた宮殿再建や皇居移転論に観られる政府・マスコミ・国民の言動も、基本的には同一線上にあるような印象で、大げさかもしれませんが都合のいい「大御心の忖度」に陥っていたのではないかと。皇室と国民の関係がこれからどう変わっていくのかなとも。2018/01/03
ソノダケン
1
イギリス王室を模範とし、「開かれた皇室(笑)」を目指しつつ挫折する皇居の住人たちのジレンマがまとめられている。しかし、そもそもなぜ日本に「皇居」が存在しないといけないのかについての考察はない。著者が編んだ『戦後史のなかの象徴天皇制』にはあったけれど。2016/01/22