内容説明
真言宗の祖、弘法大師空海は五(ご)筆(ひつ)和(わ)尚(じょう)と呼ばれた書の達人でもある。遣唐使として学んだ梵字や「五十音図」とのかかわり、異体字、文房四宝(筆・墨・紙・硯)の製作、教育機関「綜(しゅ)芸(げい)種(しゅ)智院(ちいん)」の構想など、空海にまつわるさまざまなエピソードを紹介。三筆(橘逸勢(はやなり)・嵯峨天皇)との交流に触れつつ、書や文字、ことばをめぐる空海の姿をたどる。
目次
空海と書―プロローグ/空海と文字(空海と梵字〈「真言七祖像」の梵字/空海の梵字習得/梵字悉曇/空海の梵字開眼伝説/「五十音図」/最古の「五十音図」/空海と種子曼荼羅〉以下細目略/空海と異体字/空海と雑体書)/空海と書(空海と橘逸勢/空海と孫過庭『書譜』/嵯峨天皇へのおみやげ)/空海の愉しみ(空海と「文房四宝」/空海と茶/空海の学校―綜芸種智院)/空海とことば(マーラー「大地の歌」と空海/空海の対句表現/『三教指帰』あれこれ)/文字への興味―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
狐狸窟彦兵衛
1
空海の「書」を多角的に紹介することで、その生涯を紹介しています。難解な空海の著作をさまざまなエピソードを交えて解説してあり、大変興味深い内容です。 巻末の「あとがきにかえて」で、著者が刊行直前に亡くなっていて、ご子息らが遺志を継いで出版されたと書かれています。世に出てよかったと、感動しました。2022/10/13
ハヤカワショボ夫
1
空海の多様な才能の一つ文字と言葉の面から辿るエッセイ。空海は「五筆和尚」や「三筆」の一人と呼ばれ、書において名人であることは有名ですが、それに加えて新しい芸術(文字)を学ぶことが好きでまた筆・硯等を自ら制作する程拘っていました。また文章(言葉)にも明るさと先進地の唐に負けない知識、才能を持った人でした。他に唐代に飲まれていた茶を(餅茶)嗜んでいた最初の日本人であり、綜芸種智院を作る教育好きな人でもあります。宗教面では様々な伝説に彩られた人物ですが、この本では異なった等身大の姿で描かれています。【家】★★☆2016/02/07
アメヲトコ
1
文字や書、文章などのさまざまなトピックから空海の世界の広がりについて語った本。まとまった論文というよりは話題があれこれと飛ぶエッセイ集という感じですが、それはそれで面白い。本書は著者の絶筆で、亡くなられる直前まで取り組まれていたお仕事とのこと。合掌。2015/12/11