内容説明
戊辰戦争最後の舞台となった「五稜郭の戦い」。箱館開港と明治新政府への統治移行、榎本武揚率いる旧幕府軍の五稜郭占領から開城にいたる経過を辿り、両軍の戦闘を詳述する。「蝦夷島政府」の行政と松前藩など地域社会との関係、巻き添えになった地元住民の被害、戦死傷者の扱い方などを描き出し、戦いを近世北方世界の終焉として歴史の中に位置づける。
目次
持ち込まれた戦争―プロローグ/幕末・維新期の箱館(箱館開港と蝦夷地対策/幕末箱館の都市景観/戦いの場となった主要施設)/箱館奉行所から箱館裁判所へ(五稜郭最後の箱館奉行/箱館裁判所への引き継ぎ/箱館裁判所・箱館府の治政/東北戦争と箱館府/松前藩の政変)/榎本旧幕府軍の五稜郭占領(榎本旧幕府軍の形成/五稜郭の戦いの始まり/榎本旧幕府軍の箱館占拠/旧幕府軍と松前藩との戦い)/榎本政権の占領統治(蝦夷島政権の誕生/条約国との関係/民政と民衆)/新政府軍の反攻と榎本政権崩壊(新政府軍の青森駐留/新政府軍と旧幕府軍の攻防/五稜郭開城と戦後処理)/五稜郭の戦いの歴史的意味―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
軍縮地球市民shinshin
5
新政府軍と旧幕府軍との箱館戦争を叙述した通史。著者は例によって「民衆史観」の人である。つまり左派である。だから「民衆」は「戦争に巻き込まれた可哀想な人達」という見方でしか書かれていない。これは戦後流行っている日本史研究の極めてオーソドックスな観点である。「民衆」には榎本に希望を託す人もいたかもしれないし、新政府に与した人もいたかもしれない。民衆は常に戦争の犠牲者という見方はいい加減やめてほしい。自発的に「参加」した「民衆」をどう位置づけるのか書いて欲しい。箱館戦争の通史ならば他の本を読んだほうが良い。2016/01/15
コカブ
3
幕末の蝦夷地の状況を紹介し、戊辰戦争の五稜郭の戦い終結までを描いている。五稜郭の戦いは、戊辰戦争の立場から描かれることが多いが、元々アイヌなどの歴史を扱っていた著者なので、北方史の立場から描かれるのを期待して手に取った。幕府が設置した箱館奉行所の実務担当者は、新政府の箱館裁判所に採用され、さらに旧幕府軍が来るとそのまま仕事を続けたという。箱館奉行になった人物は後で対外交渉で重要な役割を果たしたといい、小出秀実はペテルブルクまで行って国境画定交渉を行った。パリ万博以外にも幕府官僚の対外渡航があったのだ。2018/07/28
ゆずこまめ
2
元々北海道にいた人達にとっては、旧幕府軍だろうと新政府軍だろうと関係ない。まぁそれはそうなんだけど。歴史を考えるうえで視点をどこに置くかのバランスって難しい。2021/09/09
jogneko
0
「榎本武揚の共和国」に興味があったので新情報があるかと思い読んでみた。榎本についての記述は期待に反して少なく、榎本に焦点を当てたものではなかった。タイトル通り函館戦争(五稜郭の戦い)に焦点を当て、特定の個人について過度に強調することなく、「戊辰戦争最後の戦い」の時間的、空間的な経緯やロシアの圧力などを比較的淡々と客観的に記述している。たまたま函館近辺に住んでいた一般の人々の様子についても書かれており、本来関係者ではなかった人達が戦争に巻き込まれてゆく姿も具体的にわかる。最後まで面白く読むことができました。
あまたあるほし
0
これは名著。あまり読んだことのない蝦夷をめぐる攻防や松前藩の動向などが詳しい記述されている。これまでの五稜郭本とは違う。2015/10/25