内容説明
徳川将軍直属の家臣である旗本・御家人。幕府には、彼らすべてを雇用するほどのポストはなく、家柄や人脈などを駆使しての就職活動を彼らに強いていた。こうした状況下、幕府はいかにして就職や出世の仕組を作りあげたのか。悪習を改善しようとした者や自身の立身出世を図った者にも着目し、当時を生きた武士たちの姿と幕府の人事システムに迫る。
目次
江戸幕府の人事政策―プロローグ/就職難の始まり(増加する幕臣たち/徳川吉宗の就職対策/区分される御家人)/移りゆく人事政策(幕府の利益が第一/人物重視への回帰/家格令の運用)/組織を改革した男(森山孝盛とは/小普請組の形成過程/森山孝盛の小普請組改革)/立身出世を目指した男たち(堀内氏有と湯之奥金山/堀内氏有の集金策/集金策の破たん)/一つの職に異なる存在(財産没収の執行人/辞職の手続と家格/補充の手紙と家格)/人事の本質―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
月をみるもの
8
読んでみた理由(1)最近のテレビドラマとかで就活の大変さを訴えるものが多いので、江戸時代はどうだったのだろうと疑問に思った(2)幕府天文方の採用経緯をみると、硬直した身分固定という常識(?)に反して、むしろ能力本位の柔軟な人事をしているように思える。この傾向は特殊な専門職だけでなく、一般的な部門でも同じだったのか知りたかった(3)真田丸を見て、秀吉政権では失敗した(しかし平和な時代になれば当然起きるはずの)文治派/武断派対立を幕府がどのように処理したのかが気になった。2016/10/23
アメヲトコ
5
幕府による旗本・御家人の人事政策についてまとめた一冊。甲府勤番士による湯之奥金山の開発など、面白そうなネタも扱われているものの、いかんせん悪文のため非常に読みづらく、一般書として料理しきれていないのが何とももったいない。2015/12/05
ソババッケ
4
青山文平の「半席」がもとで、図書館で本書を発見。「永々御目見以上」とは何なのか、松平定信の「寛政の改革」の「家格令(1791年)」というものの中に謳われていた。定信は旗本や御家人をいかにしてやる気を出させるかに腐心していたようだ。旗本は5,205人、御家人は17,399人もいた(1722年)ようで、御家人は家格によって譜代、譜代準席、抱席(かかえせき)に区分され、それぞれに応じた64の職名が設定されている。八丁堀の与力、同心は元来の身分は町人とか。旗本職、御家人職がかくも明確にされていたとは知らなかった。2016/07/04
FKtaro
3
面白おかしく書いてるのかなと勝手に思ってたら、超マジメな資料集みたいな感じやった。ユーモアは全くないけど、江戸時代のマニアックな武士の就職事情の一端を知ることができます。2016/05/05
2
若干読みづらい。あとがきを見るに、著者も試行錯誤した末と思うが。主に「必ずしも時間順ではない」「西暦が振られていない」「資料が一部訳無し」とか(同じ研究者向けと言われると納得できる)。あと、若干論理関係で?と思うことがあったほか、個々の事例が多く、俯瞰的かと言われると少し材料不足の感あり。それから、解説のない当時の制度・役職もあり、ある程度知っている人向けの感。さて、内容は面白く、当然まず全員就職できるわけではなく、一方で小普請組というセーフティネットがあって(流石武士様)、で今と似たような苦労もあったと2022/05/21




