内容説明
南北朝時代の関白。当初後醍醐天皇に仕えながら北朝で長く執政し、位(くらい)人臣(じんしん)を極める。南朝の侵攻、寺社の嗷(ごう)訴(そ)、財政の窮乏等あまたの危機に立ち向かい、室町将軍と提携し公武関係の新局面を拓く。かたわら連歌や猿楽を熱愛し、『菟玖波(つくば)集』を編み世阿弥を見出す。毀(き)誉(よ)褒(ほう)貶(へん)激しい複雑な内面に迫り、室町文化の祖型を作り上げた、活力溢れる生涯を描く。
目次
二条殿(父祖の経歴/出生と兄弟/官途の始まり/祗候の人々/邸第と別業/所領/窮乏)/大臣の修養(朝儀の研鑽/執政の祈願/一上をめぐる暗闘/連歌への耽溺/和歌との距離)/偏執の関白(関白の詔と家政機関/「興行」の努力/仙洞の雰囲気―日記『後普光園院摂政記』/光厳院政と評定衆/即位灌頂/雑芸の愛好)/床をならべし契り(北朝の消滅/南朝の苛政/異例の践祚/美濃行幸と将軍参内の記―『小島のすさみ』/後光厳親政と議定衆/二つの勅撰集―『菟玖波集』と『新千載集』/宋代詩話の影響―『撃蒙句法』/関白辞職と内覧宣下)/再度の執政(足利義詮と執事/還補への期待/執柄の御沙汰/学芸の指導者/子息の成長と年中行事歌合/武家への接近―「異国牒状記」/父として、大閤として)以下細目略/春日神木/准三后/大樹を扶持する人/摂政太政大臣/良基の遺したもの
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
21
「室町は武士の時代」と決めつけてしまうと、こういう無類に面白い人物を見逃しかねない。南北朝の動乱で朝廷が大打撃を受ける中、強烈な個性で激流を泳ぎ切った関白・二条良基の一代記。博学で努力家、だが度し難いほどの傲岸不遜。「俺は神恩厚い人間だから」と自分で書いてしまう自信たっぷりな願文に、彼の性格がよく表れている。こりゃ毀誉褒貶あるよね。そんな良基さんが朝廷復興のパートナーに選んだのが、よりにもよってあの足利義満だった…という濃厚極まりない歴史ドラマ。2025/05/27
MUNEKAZ
15
南北朝期の北朝で、多年に渡り関白を務めた人物の評伝。武家に阿諛追従する小人という見方もできるが、正平一統による北朝の一時断絶、南都北嶺の強訴による政務停止など幾度も修羅場を潜ってきた人物なりの覚悟というか、何が何でも北朝を残すという強い意志が感じられる。伝統を重視する保守主義者だが、自らの考えた新儀を押し通すことに躊躇いのない姿勢は後醍醐帝や足利義満とも共通する部分で、この時代に相応しい性格なのかも。また文芸においては和歌を重要視せずに連歌を好み、地下歌人とも積極的に交わるなど柔軟性があるのも面白い。2020/01/31
預かりマウス
6
生まれながら摂関の地位をある程度約束されている当時の五摂家の当主にしては異常な程の強い権勢欲と傍若無人さの持ち主ながら、連歌の大成者にして、故実書を始めとした相当量の仮名作品を物した作家として、傑出した文人でもあった。まさに息子の一条経嗣が評したとおり「天下独歩」の人であり、戦乱期の北朝を全力で支え、足利三代とも渡り合い、義満にも上位で対することができた摂関家最後の巨人であった。学者の資質は孫の一条兼良が継いでいるが、これ以降政治的に良基以上の権勢と迫力を有した摂関は皆無であろう。堅実ながら読ませる内容。2024/08/18
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