内容説明
持統朝に活躍した歌人。下級官人として朝廷に出仕し、草壁(くさかべ)・高市(たけち)皇子らへの挽歌、吉野行幸の際の宮廷讃歌など、多くの儀礼歌を作ったほか、物語性の強い創作歌や瀬戸内海などへの旅の歌も残した。和歌の独自の表現を創造し、その人間像は後世に悲劇性を帯びて神格化。『万葉集』を唯一の手がかりにしながら、謎に包まれた「歌聖」の生涯に迫る。
目次
はしがき/誕生と出仕(誕生/出仕/宮廷歌人)/草壁皇子の死と人麻呂の近江行(日並(草壁)皇子挽歌/人麻呂と近江―近江荒都歌)/持統朝の吉野・伊勢行幸(吉野讃歌/持統天皇の伊勢行幸と人麻呂の留京三首/安騎野遊猟歌)/高市皇子の死と人麻呂(高市皇子挽歌/明日香皇女挽歌/長皇子への献歌)/創作歌としての相聞歌・挽歌(石見相聞歌/泣血哀慟歌/恋の歌)/旅する人麻呂(羈旅歌八首/石中死人歌―行路死人歌/異常死の歌―吉備津采女挽歌・出雲娘子挽歌)/「人麻呂歌集」(「人麻呂歌集」の文字表記/非略体歌の世界/略体歌の世界/「人麻呂歌集」の成立時期)/人麻呂の死と人麻呂伝説(人麻呂の死の伝説化―鴨山五首/人麻呂伝説・その後)/飛鳥・藤原地域の地図/略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
take5
13
著者は古代国文学の学者さん(東大名誉教授)で、人麻呂の有名な長歌、反歌(はんか)、短歌について精細な解釈と解説を行うとともに、1920年代から2015年までに発表された(この本は2017年刊)、主なほぼすべての人麻呂論についても簡潔にそのポイントに触れていて、人麻呂論に興味がある方でまだ読んだことがない方には、この本は最適な入門書なのではないかと思います(巻末に参考文献の記載あり。また国文学の著作とは普通みなされてないと思われる梅原猛の『水底の歌 - 柿本人麿論』についても触れていて、2019/11/29
はちめ
10
2017年出版であり柿本人麻呂に関するまとまった書籍としては新しく、近年の研究成果も紹介されていて参考になる。梅原猛説についてもしっかり取り上げられている。人=猿説は論外として、石見関連の歌をを実体験に基づかない創作歌としているのいただけない。その根拠も最近の研究の動向と記しているのみで説明はない。鴨山5首が持つ悲愴感についても過小評価だと言わざるを得ない。せめて「不明というほかない亅くらいにしておくべきだろう。ただ、全体としては大変参考になる一冊です。☆☆☆☆★2020/05/13
紫草
7
高校生の時(大昔!!)梅原猛の「水底の歌」を読んで以来柿本人麻呂は川の底に横たわってるイメージ。その説は学会ではほとんど無視されてたのは知ってたので、人麻呂はどこかの川に沈んで死んだ「んじゃない」らしいことは知ってたけれどそれ以外はほとんど何も知らず。そういう時に人物叢書のシリーズはいいですよね。和歌にも暗いので「ああ、この歌は見たことある。これも人麻呂なのか」というレベルで、色々初めて知って勉強になりました。梅原説がなんでだめなのかも書いてあって、なるほど、そりゃあそうだなあと納得。2021/05/17
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