内容説明
六世紀初め、近江から迎えられ大和の王権を継承した大王。淀川水系を中心に勢力を拡大し、即位後には氏姓(しせい)制・国造(こくぞう)制などの創始、百済(くだら)への援軍派遣など諸政策を実施する。晩年には「磐井の乱」を鎮圧し、死後葬られた今城塚古墳では盛大な葬送儀礼が行われた。記紀の信憑性を検証しつつ、古代国家の形成過程で大きな画期となったその生涯を追う。
目次
はしがき/継体即位前の時代(倭の五王の外交/五王の時代の王位継承/稲荷山古墳出土鉄剣銘と江田船山古墳出土大刀銘/「杖刀人」「典曹人」と府官制・人制/「画期としての雄略朝」/雄略死後の政治過程)/継体の生年と出自(記紀の伝承/『上宮記』「一云」の継体系譜 /継体の婚姻関係)/継体の即位(記紀の伝承/即位事情/隅田八幡宮所蔵人物画像鏡銘)/継体朝の内政(大伴氏と物部氏―氏姓制の成立/部民制の成立/国造制の成立/継体朝と屯倉制)/「磐井の乱」とその意義(「乱」の経過/「乱」の性格と意義)/継体朝の外交(「任那四県の割譲」/「己 ・帯沙の下賜」/近江毛野臣の派遣)/継体の死とその後(継体の墓と葬送儀礼/「辛亥の変」と二朝並立説/蘇我氏の登場/王統の形成)/むすびにかえて―継体の人物像/継体関係系図/略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
terve
32
一冊を読んで実像は全く見えてきません。そういった意味で面白くない本です。ただ、資料を丹念に読み解き、蓋然性の高い説を展開しています。事実のみを積み重ねている、非常に誠実な一冊です。『〜の謎は解けた』といった本より遥かに信用できます。磐井の乱がヤマト政権にとって大きな出来事である。今城塚古墳が継体天皇の墓である。いずれもかなり蓋然性の高い事実であり、ホッとしました。篠川先生は国造制研究の第一人者でもありますが、人物叢書でも緻密な論を展開され、その学識を遺憾なく発揮されています。2020/01/25
紫草
7
継体天皇本人については史料が少ない上、信頼できる史料はさらに少ないため、周りから攻めて妥当と思われる説を組み立てて行く。史料と研究から蓋然性の高い説を選んでいく過程はミステリ読んでるみたいでとてもおもしろい。この時代のことをよく知らないのですが、その周りから攻めてるおかげで、当時の様々な情勢もよくわかり、理解しやすかったです。記紀などの史料も、まずふりがなつきの訓み下し文、その後筆者が要約をしてくれてて親切。まあ結局継体天皇が誰なのか?はわからないんだけど、それは仕方ない。2020/02/15
そーだ
4
史料の内容を史実と文飾とに弁別していく過程が読んでて面白い。判別不能なことはそのまま不能だとはっきり記しているのも好感が持てた。系図は割と好きだけど、継体天皇の出自が「応神記」に接続して形作られていることには気づいてなかった。面白かった。2016/11/04
ソノダケン
4
「応神五世孫説」がはっきり退けられている。継体にも何滴かの血が流れてたかもしれないが、それを言ったら人類みな兄弟だし、どこの馬の骨でも天皇になれてしまう。ほかに宣伝するだけの證拠がないってことは、繋がってないんだろう。2016/06/23
きさらぎ
4
<『人物叢書』なのに最後まで読んでも人物像がまるで判らない、と読者から叱られそう>と結びにある。記紀や百済本記、三国史記などを参考にしつつ、基本的に各記事を「読み下し→要約→記事の信憑性の検討→史実の考察、学説の比較」と一つ一つ丹念に辿っていく。それだけに根気が要るというか、決して読みやすくはないのだが、非常に誠実さを感じる本。ウヂ・カバネを始め当時の仕組みを懇々と説明されると私などはややげんなりしてしまうが(苦笑)磐井の乱前後などは朝鮮半島も絡んで動きがあって面白かった。まずは勉強しないとなー。2016/03/22
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