ちくま新書<br> 会計と経営の七〇〇年史 ──五つの発明による興奮と狂乱

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ちくま新書
会計と経営の七〇〇年史 ──五つの発明による興奮と狂乱

  • 著者名:田中靖浩【著者】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2022/04発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 210pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074751

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内容説明

ペストが流行して大混乱のイタリアで、「簿記」の技術が発達した。商売の組織が大きくなり、オランダで「株式会社」をつくって「証券取引所」で資金を調達するようになった。大規模な初期投資を行う産業革命下のイギリスで「利益計算」が登場し、やがてアメリカでは投資家に対して会社の「情報公開」を始めた。現代のビジネスを支える五つの大発明の影に、逆境に立ち向かう者たちの興奮と狂乱のドラマあり。数字嫌いを吹き飛ばす、世界初、会計講談!

目次

まえがき──お札になった酔いどれ殺人者
第一章 ルネサンスを支えた簿記の技術〈イタリア〉 ──神の支配から人間が主人公の時代へ
1 幸せと不幸、どちらの足音も東方からやってくる
東方にあこがれる西の人々
情報共有しないペッパーサックたち
東方からやってきた不幸の病
混乱から新旧交代へ
ローマ教会とメディチ家のスーパーコラボでルネサンスが生まれた
2 メディチ家が分散組織を管理した手法
中世のキャッシュレス取引だった為替手形
融資が禁じられたことで手数料商売が発展
すぐれた情報収集と分析を行っていたメディチ銀行
メディチ銀行の「分権経営」
簿記を用いて支店がワンチームに
3 ダ・ヴィンチが故郷にいられなくなった記録好き文化
記録好きのイタリアにて簿記が発展
レオナルド・ダ・ヴィンチの苦悩と挑戦
なぜイタリアの至宝『モナ・リザ』がフランスにあるのか?
神が主役の時代から人間が主役の時代へ
第二章 大航海時代に広げすぎた多角化経営〈スペイン〉 ──政治が中心から会計が中心の時代へ
1 大航海時代のスペインが新大陸を目指した理由
銀とトマトがやってきた
スペインがねらったキリスト教の布教
税金のはじまり
太陽の沈まない帝国の経営難
2 受け継がれる負の遺産
会計嫌いの親子
後輩を勇気づけたエル・グレコ
良い借金と悪い借金
最高の宇宙貯金
3 宗教改革は父への反抗!?
プロテスタントの台頭
父の故郷を弾圧、増税
残された教訓
トマトを食べる勇気
第三章 寛容の精神が生んだ株式会社と証券取引所〈オランダ〉 ──苦しみの労働から働く喜びへ
1 プロテスタントの国オランダ誕生
風車の似合うオランダのはじまり
ブリューゲル絵画に描かれた人々の嘆き
マーケティングが上手なプロテスタント指導者
オランダとベルギーはこうして分かれた
2 オランダ黄金時代に商売人が集合
商売人たちの宗教ノーサイド宣言
アムステルダムに大集合した商売人たちの盛り上がり
後発組として東インド航海へ進出
株式会社と証券取引所の誕生
3 短かったオランダ黄金時代の教訓
チューリップ・バブルの皮肉
金融商品は下がるときにはすべてが下がる
東インド会社、3つの失敗とその後の会計発展
「自分のため」から「他人のため」へ
第四章 決算書を情報公開した浪費国家の混乱〈フランス〉 ──プライベート所有からパブリック公開の時代へ
1 王侯貴族のムダ遣いと苦しむ市民たち
絵画と決算書は「つくる」前に「読む」こと
酔っても女性がきれいでいられるお酒
「働かないことが自慢」の王侯貴族
ノーモア・スペインの秘策
2 王様と財務の右腕のタッグは成功するか?
キッチリ男コルベールの徴税請負人制度
ほらふき男の起こしたフレンチ・バブル
国の決算書を公開したやりすぎ男
貧しさからジャガイモを食べはじめたフランス人
3 情報を公開して盛り上げる
フランスの師団が事業部制のルーツ
情報公開で盛り上げるフランスの文化
ブランドづくりが得意なフランス
フランスの残した数々の教訓
不幸のあとにはチャンスがある
第五章 線路と利益計算は続くよ、どこまでも〈イギリス〉 ──小規模生産から大規模工場へ
1 木材不足のピンチから世界の工場へ
イタリアのジェントルマンにあこがれたイギリス人
プライバシーに配慮した画期的な税金
石炭の活用によってピンチを克服
炭鉱で生まれた蒸気機関
想定外の連続で蒸気機関車が誕生
2 減価償却が幕を開けた利益計算
巨大な初期投資に悩む鉄道会社の経営者
株主へ配当するため減価償却が登場
複雑化した会計を悪用した粉飾
会計士と監査のはじまり
3 レイルウェイ・マニアの熱狂
鉄道会社の生んだイノベーション
イノベーションを生む組織のつくり方
原価計算に強い企業が生き残る
アメリカへ向かう投資マネーと経営分析
経営分析の進化と強欲の歴史
世界的会計事務所の誕生
第六章 そしてすべてがつながった〈アメリカ〉 ──原価計算から管理会計、そしてディスクロージャーへ
1 「漁夫の利」の地で連結決算が誕生
敵の失点で領土拡大したアメリカ
標準軌のおかげでM&Aが活発化
M&Aの多い鉄道会社から連結決算が誕生
悲願の大陸横断鉄道からはじまる大量生産
2 アメリカ経済の黄金期をつくった「規模の経済」
原価計算を武器に出世したカーネギー
規模の経済を目指して成功した男たち
主役は自動車へ
フォードの成功とカンパニー・マニア
シカゴ大学にて管理会計講座が誕生
3 大恐慌を乗り切った者たち
アメリカを襲った大恐慌
ブランド投資の重要性と会計との接点
悪党ジョー、クリーンな市場改革を行う
アメリカで花開いたディスクロージャー
悪党が遺したもの
あとがき(感謝とともに)
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kawa

38
良書「会計の世界史」の著者の新著。こちらもタイトルの堅苦しさに反して読み易い。14世紀、ルネサンス下の簿記技術と銀行発達のイタリア。15、16世紀大航海時代、会計嫌いで放漫経営スペイン。17世紀、労働好きプロテスタントの株式会社・証券取引所開設のオランダ。重税と国家財政を公開したフランス。19世紀、産業革命に伴う発生主義会計・原価計算と経営分析のイギリス。20世紀、ベルト・コンベア生産法の確立し、管理会計・未来計算、デイスクロージャーを発達させたアメリカ。「簡にして要」その流れが解りやすくとても良い。 2022/05/21

ta_chanko

27
会計と経営の歴史は、簿記(イタリア)⇒株式会社・証券取引所(オランダ)⇒減価償却・連結決算・利益計算(イギリス)⇒原価計算・管理会計・情報開示(アメリカ)の順に発展してきた。スペインの多角化経営、フランスの情報開示の失敗も反面教師として教訓にしながら。イタリア・オランダは香辛料貿易で、イギリス・アメリカは鉄道建設を機に、会計・経営上の発明を成し遂げ、資本主義経済も大きく発展。しかし、いつの時代も過剰な投資には要注意。チューリップバブル(蘭)、ミシシッピ会社(仏)、南海泡沫事件(英)、世界恐慌(米)...。2023/02/18

Katsuto Yoshinaga

14
著者の会計講談「会計の世界史」が良かったのでもう一冊。大筋は「会計の世界史」で、紹介されるエピソードもいくつか重複しているが、新ネタも多々あり充分楽しく読める。「イタリア人は記録好きだからダヴィンチの生年月日も記録されている」「キリスト教布教の裏には、税金徴収の権利がある」「経営/経済の手本を米英に求めたしまった日本は労働を美徳とする隠れプロテスタント。労働を苦役とするカトリック(伊、仏、西)諸国で働き方改革は話題にならない」といったあたりは感心しきりであった。この人の講談はおもろいわぁ。2022/06/08

はるわか

10
会計の発展と5つの発明:①簿記(イタリア)、②株式会社と③証券取引所(オランダ)、④利益計算(イギリス・減価償却、アメリカ・原価計算)、⑤情報公開(フランス・国の決算書(無駄遣い)公開→革命、アメリカ・ディスクロージャー)。2022/07/16

ようへい

9
会計はイタリアの簿記、オランダの株式会社と証券取引所、イギリスの利益計算、フランスとアメリカの情報公開という発明を経て現在の姿になった。本書は様々な文献を上手にカクテルし、会計を話題の中心にしつつも巧みに歴史のトリビアを織り交ぜて好奇心を擽る。産業革命の担い手であった労働者たちは安くて高カロリーなフィッシュ&チップスを食べ、アメリカの鉄道敷設では手軽なホットドックが流行った。やがてそれはキッチンカーとなりダイナーが誕生する。歴史の本筋からは外れるが、つい見落とされがちな事実がとても面白いし、リアルを語る。2022/06/17

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