中世の写本ができるまで

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中世の写本ができるまで

  • ISBN:9784560098455

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内容説明

解説を聞きながら鑑賞するような楽しみ

写本制作は盛期ルネサンスまで千数百年にわたって、多様な環境のもと、ヨーロッパの津々浦々で行なわれてきた。その特徴としてすべての事例にあてはまるものがないほどだ。本書はそんな中世の彩飾写本(彩色だけでなく金か銀が施されているものをこう呼ぶ)が作られる工程を、制作に携わったひとびとの視点に寄り添う形で、写本研究の第一人者が解説していく。
中世に使われていたインクやペンは、今日使われているものとは性質も製法も異なった。挿絵の中の写字生は現代のペンとは違った持ち方をし、文字もじっくり観察すれば、現代のアルファベットとは書き順が異なる。同様に、「挿絵のデザインは誰がどうやって決めたのか?」「インクで書き間違えてしまったら、どう対処したのか?」「羊皮紙ヴェラムの最高級品は本当に牛の胎児の皮製なのか?」といった、写本を鑑賞するうちに浮かんでくる疑問の数々が、オックスフォード大学ボドリアン図書館所蔵の写本を中心とする多数の図版とともに検討される。
西洋中世写本の愛好家にその魅力を伝えつつ、専門家にも貴重な写本の細部について、新たな世界を開いてくれる一冊。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

六点

23
活版印刷が普及する以前、人類が知識を頒布する唯一の手段であった、「写本」が実際にどのように、欧州で作られていたかを、羊皮紙の生産から始め、最終的に製本されるまでを通覧したものである。途轍もない労働の集積である。また、人間の知恵や工夫が、注ぎ込まれていることに息を呑む。挿絵やテキストの装飾の美しさは、職人の神技によるものであることは、洋の東西を問わないものであるなと思う。図版も美しく、読めない人間であるぬこ田にも大きな感動を与える。「美しいもの」に対する、新しい扉がぬこ田の前に開かれた、そんな気がした。2021/09/09

19
以前から、中世写本の世界を知りたいと思っていた。日本語で中世写本の制作過程についての本が出版されるのは珍しく、嬉々として手に取った。まず装丁に惹かれた。目次の背景が写本。紙も上質。少しめくっただけでもう最高に美しい本だと思った。内容も、羊皮紙や羽根ペンやインクの説明、写本生を描いた写本画の図版、余白に描かれた写字生が写し漏れた文章のことなど、今まで眺めて美しいと感じるだけだった写本を-依然として文字は読めないが-より楽しむことができるようになった。図版を眺めるだけでも幸福な気持ちになる一冊。2021/09/13

組織液

14
中世写本の製作過程について、製本や筆写だけではなく、羊皮紙の作り方やインクの生成方法に至るまでを簡単に解説している本です。羊皮紙持ってるんでそれいじりながら読みましたw。当時の本は一冊で家一軒ほどの値段がするなんて話もありますが、ここまで手間かかるなら確かに相当な値段するでしょうね() ましてや装飾写本ともなると。描き終えた写字生が末尾に「酒飲みたい」とか「一番つまんない筆写だった」とか愚痴書いてるのほんと好きです。他の写本関連の本も読んでみたいですね。2022/11/29

Tomoko 英会話講師&翻訳者

6
語学講座の先生が写本(manuscript)を紹介されるので、写真がありそうな本を借りてみた。飾り文字があったり、挿絵が入っていたり。p.23~羊皮紙の作り方あり。羊の皮とは限らない。穴があいていたり、裂け目を繕ったりした羊皮紙もある。パピルスは巻物には向くが綴じられた本には向かない(繊維が折れる)。2023/05/16

ゆの字

6
あとがきの「学術的背景をもたない愛好家にその魅力を伝える入門書」との言葉通り、素人の自分にもとても分かりやすくて興味深い内容だった。図版も豊富で、かつ美しく、もっと写本について知りたいという欲が出てきた。いいお値段だけど、それ以上の価値がある本だと思う。2021/12/17

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