集英社新書<br> 大東亜共栄圏のクールジャパン 「協働」する文化工作

個数:1
紙書籍版価格
¥1,034
  • 電子書籍
  • Reader

集英社新書
大東亜共栄圏のクールジャパン 「協働」する文化工作

  • 著者名:大塚英志【著】
  • 価格 ¥1,034(本体¥940)
  • 集英社(2022/03発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784087212075

ファイル: /

内容説明

「クールジャパン」に象徴される各国が競い合うようにおこなっている文化輸出政策。
保守政治家の支持基盤になっている陰謀論者。
政党がメディアや支持者を動員して遂行するSNS工作。
これらの起源は戦時下、大政翼賛会がまんがや映画、小説、アニメを用いておこなったアジアの国々への国家喧伝に見出せる。
宣伝物として用いられる作品を創作者たちが積極的に創り、読者や受け手を戦争に動員する。
その計画の内実と、大東亜共栄圏の形成のために遂行された官民協働の文化工作の全貌を詳らかにしていく。

【本文より】
全てが戦時下に連なるというのはある意味では正しい。
ぼくは戦後から現在に至る生活や政治や文化のあり方が戦後の基調にあり、その表層をお色直し、コーティングしてきた戦後民主主義が衰退して剥離することで、戦時下の様相が復興したと考える。
そしてそもそも戦時下に設計されたそれら文化創造や政治参加のあり方は良くも悪くも(私見ではより悪く)SNSやオンラインと整合性が高いとも考えられるのだ。
だから本書もまた、ぼくは戦時下の「協働する文化工作」をめぐる諸相を「現在」への極めてベタな批評として語ることにする。
(序章 協働する「文化工作」)

目次

序章 協働する「文化工作」
第一章 「外地」の「翼賛一家」――戦時下華北地方・日本統治朝鮮の事例を中心に
第二章 満蒙開拓青少年義勇軍と田河水泡・阪本牙城のまんが教室
第三章 上海の文化工作者たち――“女スパイ”と芥川賞作家と偽装映画制作者
第四章 大東亜共栄圏とユビキタス的情報空間――アニメ『桃太郎 海の神兵』と柳田國男

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

keroppi

73
戦時中のプロパガンダである漫画、アニメ、映画の数々。さらに、官民、プロとアマチュアを越えた戦意高揚の協働から生まれた創作物。戦時下のファシズムはこうした参加型の文化創造運動の面があるという。手塚治虫のデビュー前の作品「勝利の日まで」も取り上げている。手塚治虫にして、この当時、そう考えていたのだ。こういう状況下では、『まんがは結局は戦争という「現実」を書き得ず、何か愉快で楽しいものに転化する役割を果たす。』戦後は、戦争を追求する幾多の傑作漫画が生まれているのだが。2022/06/23

ひろ

2
学生の頃左派の教授の講義を受けたとき、折々に参照されるバルトやマクルーハンのテクストには多大な示唆を受けたが、教授自身の論理展開に一貫性を感じず学びを得られなかった、そんな記憶を呼び覚ます本だった。戦時下にプロパガンダがあったこと、それを展開した人物がいたこと、同時代の作品は相互に参照され類似する表現が見られること、いずれも当たり前というか、だから何だという気持ちになる。2023/05/26

kana0202

2
新書にしては本格的だと思ったら、別に発表された論文集だった。こういう本格的なものが新書ででることはイイことだ。マンガやアニメ文学がどのようにプロパガンダを形成していたか、一つずつの作品を見るだけでなく様々な作品に共通して現れるモチーフや言葉を全面的にみていくことでわかることがある。相互に補完し、引用しあいながら形成される情報空間こそがいちばんおそろしい、と。メディアミックスという言葉では捉えきれないような次元を思考しながらでないと捉えられない戦時下の大衆文化形成がよくわかった。2022/07/15

Aby

2
太平洋戦争期のプロパガンダ.戦地と銃後,外地と内地,プロとアマ,官民協働の総力戦.マンガ,映画,文芸はもちろん,新聞広告などを含んだユビキタス展開.連呼されているようなものだが,今だからこそ,怪しいと感じるのだろう.大流行との違いを見分けないと.2022/06/30

onepei

2
共有させるために協働しようとした2022/06/05

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/19415397
  • ご注意事項