内容説明
紅玉いづきデビュー15周年記念・3か月連続刊行【第1弾】
伝説は、夜の森と共に――。完全版が紡ぐ新しい始まり。
魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。額には「332」の焼き印、両手両足には外されることのない鎖。自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。願いはたった、一つだけ。「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」
死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。全ての始まりは、美しい月夜だった。それは、絶望の果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語。
加筆修正の末、ある結末に辿り着いた外伝『鳥籠巫女と聖剣の騎士』を併録。
15年前、第13回電撃小説大賞《大賞》を受賞し、数多の少年少女と少女の心を持つ大人達の魂に触れた伝説の物語が、完全版で甦る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
126
圧倒的吸引力の一冊。人が人を想う魔力に圧倒された。森の闇がいざない、生ける屍と化した少女ミミズクにスルリと心に潜り込まれ、飄々さの裏側に纏う絶望が苦しいほど心を吸い込み離さない。次第に溶け出す彼女の凍りついた心と封印された時間。降り注ぐ陽のような言葉とただ一人の存在が彼女を溶かし、溶けた雫が涙の雫へと変わる瞬間を思い浮かべては感涙。愛という名の拒絶、不器用という名の愛。哀しみと幸せの表裏一体を知り得た涙ほど価値が有り美しいものはない。架空の世界がストレートに魅せる、涙が照らす愛と生きる意味への導き物語。2023/03/16
オセロ
110
【KU】あっと驚くような展開はないけれど、こういうのがいいんですよね。 人間に虐げられ、魔物が暮らす森で夜の王に育てられた少女のミミズクの人生は何て壮絶なんだろう。魔物だけでなく人間の優しさに翻弄されながらも、きちんと意図が伝わっての彼女の決断はグッときましたね。2024/05/30
すがはら
105
前日譚と後日談を加えての完全版とのことで購入。本編は数年ぶりに読んだけれど、やはり面白い。人間は魔物より狡猾で卑怯だな。男気を見せたディアに救われました。超然としながら情も垣間見せる夜の王も良いけど、クロちゃんの愛や思いやりを感じさせるナイスアシストが特に素敵。他の魔物は姿を見せてくれなかったけど魔物達と夜の王の関係性を読んでみたかったです。ミミズクはしっかり喋るようになってからが生き生きしてて、最後に一気に全てを引っ張って夜の森へ帰った感じが格好良かった。2022/05/07
がらくたどん
93
額に品番のような焼き印を押され手足の鎖を引きずりながら魔物の森で死を願う「ミミズク」と名乗る少女。間延びした道化のような口調で話し己の身体と心に繰り返しつけられた傷を開いては「へらり」と笑う壊れかけた少女が「夜の王」との出会いを契機に意志を涙をそして生きたい気持ちを取り戻していく物語。仕方ないから居る場所。護られ与えられた居場所。掴み取る居場所。魔法と騎士が登場する世界はどこか童話的で親しみやすい入口を持つが、騎士と巫女・王と王子の関係性にも「自分の居場所は自分が決める」という主題が重層的に響きあい骨太。2023/03/19
yukaring
90
なんて切なくて愛おしくて優しい物語なのだろう。逃げ出した奴隷の少女ミミズクと美しき魔物の王が織り成す一編の詩。美しい月夜の森で出会った2人。手足を鎖で繋がれ額に焼き印を押された少女は魔物の王に自分を食べてほしいと願う。しかし夜の王はただ彼女の壮絶な半生に耳を傾ける。しかし森の中のそんな静かな時間に異変が・・。どんな時も相手を想う強い絆、2人の心の繋がりを思うと溢れる涙が止まらない。ミミズクを廻る人々や魔物達の不器用な優しさが心に染み渡り、世界が愛に満ちている事を改めて思い出させるようなそんな珠玉の物語。2023/03/19