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内容説明
世界の注目を集めつづけるプーチンだが、この「隣国の独裁者」の素顔は意外に知られていない。本書では豊富なエピソードや肉声を通じ、その人物像に迫る。貧しい労働者階級の家庭で育ったプーチンは、子供のころからの夢であったKGBに入るが、鳴かず飛ばずの中佐止まりだった。その後、ひょんなことからサンクト・ペテルブルクの副市長となり、中央政界に出てとんとん拍子に出世する。長年ノーマークの存在だったために、その経歴には謎も多い。資源依存型の経済運営で国策企業に側近たちを送り込むなど、あらゆる利権をクレムリンで掌握、外交面でも徹底した首脳外交で武器輸出のセールスマンとしても活躍してきた。一方、ジェット機を操縦したり虎退治をしたり、あるいは「国民との対話」という4時間以上のテレビ出演といった派手なパフォーマンスなどをみせるなど、メディア操作にも長けている。――世界の運命のカギを握る「黒い皇帝」の野望の原点がここに。
※この電子書籍は、2012年5月に刊行された文春新書を底本としています。また電子書籍版では、収録されていない写真があります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
37
プーチン氏が戦争を始めた。では、プーチン氏とはどんな人物なのか? 2012年、政治学者らとの会見で、「あなたに最も政治的影響を与えた歴代の皇帝やソ連共産党書記長は誰か」との質問に、彼はこう答えている。 【「ロシアの歴史は不幸にも、大半は暗く、流血に満ち、排他的なものだった。それでも、献身的な努力がなされた時期がある。アレクサンドル・ネフスキーなどがその例だ。私はネフスキーが大好きだ。次がピョートル大帝と初期のエカテリーナ女帝だ。女帝の時代にロシアは領土を拡張した。流血は少なく、領域の拡大があった」】2022/02/28
雲をみるひと
25
プーチン3選前でウクライナとクリミアの一件も起きていない10年ほど前に出版された本。プーチンの生い立ちや大統領就任までの経緯、及び初期の大統領としての振る舞い、ポピュラリストとしての側面などが詳しく書かれている。プーチンに懐疑的なスタンスが取られている。チェチェン関連の自作自演説などは流石にそれはないだろうという印象も受けるが、昨今のプーチンの言動を見るとそうだったのかもしれないとも思えてくる。今読みたいプーチン本と言えるかもしれない。2023/04/02
matsu04
18
著者は、現下のロシア体制は黒い皇帝・プーチンが絶対的権力を有する愚民政権だと指摘した上、今の地位にまでのし上がった彼の経歴を辿るのであるが、KGB時代は二流だった事実、大統領就任後の失政の数々や不正蓄財、取巻きグループの腐敗等に触れるなど、結構手厳しい。2015/07/06
ちくわん
17
2012年5月の本。現役のプーチン大統領を知るために。第三章で取り上げられた年末恒例の「国民との対話」というテレビ番組。国が変わればやり方も変わる。ここ30年のことではあるが、知らない(あるいは完全に忘れ去った)ことが多いこと。面白かった。2020/11/23
白義
15
タイトルこそ安いが、人間として、政治家としてさまざまな顔を持ったプーチンの姿を分かりやすく伝えてくれる。怖くて寡黙なイメージが何となくあるが、その高圧的強権の裏には恐れや怯えもあり、元スパイなのに劇場メディア型政治を駆使し、弱者の味方という印象を与えるすべも知っている。一方、腐敗や不正の影も色濃く、あからさまな大国志向は隠さない。冷徹と激情、緻密さといい加減さ、強さと弱さなど様々な側面が同居する複雑な人物というイメージを抱いた。孤独な独裁者とはそもそもそんなものなのかもしれない2014/07/29