岩波新書<br> 江戸の学びと思想家たち

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岩波新書
江戸の学びと思想家たち

  • 著者名:辻本雅史
  • 価格 ¥968(本体¥880)
  • 岩波書店(2022/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004319030

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内容説明

長い戦乱をへて平和がもたらされた近世とは,世代から世代へと〈知〉を文字によって学び伝えてゆく時代の到来であり,そうした「教育社会」こそが,個性豊かな思想家を生みだした.朱子学から,山崎闇斎,伊藤仁斎,荻生徂徠,貝原益軒,心学,そして国学まで,〈学び〉と〈メディア〉の視点から広くみわたす江戸思想史入門.

目次

序章 知のつくられかた┴「型の喪失」/素読世代/近代学校の始まり/学校教育の知/学校教育と教養派知識人/知の身体性/アジアの思想伝統の不在/メディアの視点から┴第一章 「教育社会」の成立と儒学の学び┴1 文字の普及と文字文化┴文字社会の成立/江戸時代の文字使用/都市の発展と商業/手習塾の登場/「書礼」の学習/御家流/文字文化の共通化┴2 商業出版の登場┴一七世紀日本のメディア革命/声と文字の交錯/学びのテキスト/和刻本┴3 儒学の学び┴科挙のない社会/民衆の学問志向/素読 漢文で考える/テキストの身体化/訓読体漢文の言語/儒学の学習法/日本近世の〈知のつくられかた〉┴4 「教育社会」の成立┴「教育社会」とは/手習塾と学問塾/郷学/近世教育の豊かさ┴第二章 明代朱子学と山崎闇斎 四書学の受容から体認自得へ┴1 四書学の受容 江戸前期の朱子学者たち┴読めない漢籍をいかに読むか/明代の四書学/四書学本の受容/訓読テキストへの変換┴2 山崎闇斎 文字を超えた「講釈」の学┴末疏の書の排斥/『闢異』 排仏論/朱子学とは/闇斎の朱子学/「心」の確立を求めて/幕藩領主や武士層への浸透/闇斎の語り口/思想の方法としての「講釈」┴第三章 伊藤仁斎と荻生徂徠 読書・看書・会読┴1 伊藤仁斎 独習と会読┴闇斎と仁斎/町衆文化の中心圏/儒学への志/「敬」との決別 「仁斎」の誕生/否定的媒介としての闇斎学/同志会での学び┴2 「論語空間」の発見┴「人倫日用」の学/「最上至極宇宙第一論語」/仁斎の『論語』解釈の方法/浅見絅斎の仁斎批判/仁斎学のメディア┴3 荻生徂徠 学問の方法をめぐって┴闇斎学と仁斎学に対抗して/荻生徂徠という人/講釈十害論 闇斎学への違和感/読めない漢文をどう読むか/読書法/看書という方法/徂徠学の成立 「安天下の道」/「道」のパラダイム転換/古文辞学との出会い/「習熟」/知の発信メディア┴第四章 貝原益軒のメディア戦略 商業出版と読者┴1 益軒の学びと学問┴貝原益軒とはだれか/独学自習の体験/知のネットワーク/「民生日用」┴2 「天地につかえる」思想┴「事天地」の説/「民生日用」と「術」の学/「礼」という身体技法┴3 益軒本の読者┴益軒本/読者にとっての益軒本/読書する民衆/読者とメディア┴第五章 石田梅岩と石門心学 声の復権┴メディア革命のなかで┴1 石田梅岩の学び┴梅岩の志/梅岩の学び┴2 開悟からの語り出し┴開悟体験/開悟体験を拠り所に/文字への不信/「声の復権」を誘引したもの/著作の出版と「学問」の意味転換┴3 石門心学の創出┴梅岩の講釈/後継者・手島堵庵/石門心学の組織化/会輔 心学者の学び/教化方法の革新 前訓と出版┴4 「道話」の発明┴心学道話 マス・ローグの語り/道話の語り/語りの技法/石門心学へのまなざし┴5 石門心学の歴史的位置┴儒学の教説化とそのメディア/寛政改革と石門心学/政治のメディア┴第六章 本居宣長と平田篤胤 国学における文字と声┴漢学に抗して┴1 儒学の学問圏からの脱出┴京都への遊学/漢文から和文へ/儒学的思考からの脱却/和歌詠歌と音声言語/『古事記』の発見/〈やまとことば〉の復元作業┴2 声の共同性┴歌の力/二つの歌会 和歌に託したもの┴3 宣長の知のメディア┴書斎の知識人/声と文字の相克┴4 平田国学における声と文字┴平田篤胤 宣長没後の門人/『霊能真柱』 霊の行方と「安定」/篤胤の危機認識/欧米列強の接近┴5 講釈講説家・篤胤の登場┴神職支配をめぐる吉田家と白川家/講釈家・篤胤/講釈聞書本/篤胤にとっての出版 『古史成文』がめざしたこと/門弟たちにとっての出版/メディアの駆動力┴終 章 江戸の学びとその行方 幕末から明治へ┴江戸の学びの視点から┴1 明六社 漢学世代の洋学受容┴明六社の創設/明六社というメディア┴2 中村敬宇┴ロンドンでの素読/漢学廃すべからず┴3 中江兆民┴漢学の学び直し/『民約訳解』の漢文翻訳┴4 「型」と自己形成┴自己形成の拠り所/地球環境危機のなかで┴5 メディア革命と知の変容┴近代の知のメディア/二一世紀のメディア革命/近代の終焉と知の行方┴あとがき┴主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

117
統一された教科書を使って学校で学ぶのではない時代、知識や思想はどのように伝えられ広がったのか。平和な世で識字率が高まった江戸期に生まれた思想と、それが全国に広まっていく状況を解き明かしていく。一方的な講義だけの闇斎から著作も始めた仁斎、政治ブレーンになった徂徠と著作一本槍の益軒を経て、人に聞かせる講釈の工夫や組織化で世間に知られた心学や国学に至るまで素読という共通の基礎教養を前提に「知を伝達するノウハウ」が変遷する過程はメディア論的にも興味深い。学校教育が行き詰まる今日、改めて振り返る価値はあると思える。2022/01/30

肉尊

85
EdTechをさらに進化させた全世代型教育メタバース開発プロジェクト(仮)の一環として、江戸時代の学びの「型」は非常に参考になる。四書五経の類いの素読は、後に教育勅語へ、戦後は英語教科書や日本国憲法前文など姿を変えて受け継がれてきた。知を身体化つまり肌感覚として身につけるためには、主体的に課題に取り組み、試行錯誤のうえ自ら気付くことが大切なのだろう。本書を読んで感じたのは、石田梅岩の心学は、よしもと新喜劇に通じてるのでは!?学びたい人々のニーズに応えられる知の空間を創造してみるのも楽しそうだ。2023/01/13

ころこ

41
明治維新の成功には江戸時代の学問がある。それらの系譜を辿る本として読んだ。半分当たって、半分予想と異なることが書いてあった。著者は近代の知のメディアは出版であり、図書館の蔵書数はその象徴性を誇っていたが、ネットをはじめとした情報技術の発展が近代の知の終焉を加速させ、教育現場に混乱をもたらしているという。「インターネットは、知の〈外部化〉を極度に進めているようにみえる。知は、人の主体(身体)を離れて、ネット空間に乱雑にあふれている。〈知の身体化〉を疎外すること流れは止まらない。」とした上で、「人は生きていく2022/11/18

崩紫サロメ

27
<知のつくりかた/つくられかた>の変容を扱う。本書が中心として扱う江戸時代は漢文素読による「知の身体化」の時代であった。それは明治第一世代にも引き継がれ、欧米文化の受容にも影響した。しかし、近代学校教育の普及に伴い、この身体性は失われていく。丸暗記という行為は現代においては否定されがちであるが、本書で扱われる江戸・明治の知の巨人たちが丸暗記を「己を空しくする体験」として受け止め、知を身体化してきた。現代の学びのあり方について考えさせられるところの多い書である。2022/01/07

おおにし

25
(読書会課題本)江戸時代の民衆は寺子屋(手習い塾)で何を習ったのか。①書き読み(書くことから始める)②書礼(時候挨拶から冠婚葬祭の文例)③政治文書(請願者など)職業的文書(領収書、証書など)の書式④道徳規範など、方言が通じなくても書面は全国どこでも通用したという高度な文字教育が識字率の高い国民を作った。また、武士の儒学教育での漢籍素読によるテキストの身体化が西洋思想の導入に貢献。中江兆民はルソーを漢文翻訳した。漢文素読の代替となる教育メディアを持たないまま、日本人の知的レベルは低下し続けている?2022/06/30

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