岩波新書<br> 視覚化する味覚 - 食を彩る資本主義

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岩波新書
視覚化する味覚 - 食を彩る資本主義

  • 著者名:久野愛
  • 価格 ¥1,034(本体¥940)
  • 岩波書店(2022/03発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004319023

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内容説明

現代の色彩豊かな視覚環境の下ではほとんど意識されないが,私たちが認識する「自然な(あるべき)」色の多くは,経済・政治・社会の複雑な絡み合いの中で歴史的に構築されたものである.食べ物の色に焦点を当て,資本主義の発展とともに色の持つ意味や価値がどのように変化してきたのかを,感覚史研究の実践によりひもとく.

目次

まえがき┴第一部 近代視覚文化の誕生┴第一章 感覚の帝国┴味と色の瞑想/大量生産時代の到来/感覚産業複合体┴第二章 色と科学とモダニティ┴消費資本主義の台頭と色彩革命/色彩科学と色の客体化/色のプロフェッショナルの誕生/複製技術と味覚の表象/文字から絵,モノクロからカラーへ/「自然」な色の再現┴第三章 産業と政府が作り出す色 食品着色ビジネスの誕生┴合成着色料の誕生/産業化する食品着色ビジネス/食品規制が作り出す市場/「おいしそう」は安全か?/赤色の恐怖┴【コラム】食品サンプル┴第二部 食品の色が作られる「場」┴第四章 農場の工場化┴「自然な」色の構築/オレンジ産業にみる色と競争優位/オレンジは何色か?/自然と人工の境界┴第五章 フェイク・フード┴黄色いバターと白いバター/人造バターが脅かす酪農産業/自然の黄色は誰のもの?/偽物を真似る本物/マーガリンの「自然な」色/カラー・ポリティクス┴第六章 近代消費主義が彩る食卓┴料理本が教えるおいしい色/美しい料理と良妻賢母イデオロギー/色が映す人種と階級/パッケージ化される女性像/便利すぎる商品/インスタント食材とクリエイティビティ┴【コラム】和菓子の美学┴第七章 視覚装置としてのスーパーマーケット┴セルフサービス黎明期の魅せる陳列/スペクタクル化する食品/スーパーマーケットの技術革命/透明性が隠すもの/個人化する買い物と視覚性┴第三部 視覚優位の崩壊?┴第八章 大量消費社会と揺らぐ自然観┴戦後の豊かさと綻び/アースカラーの対抗文化/新しい「自然」の発見/「自然」回帰┴【コラム】教育からエンタメへ┴第九章 ヴァーチャルな視覚┴ネットスーパー/記号化する食/SNSの誕生/揺らぐプロとアマの境界/コンシューマーからプロシューマーへ/「盛る」ための写真/情動を引き出す食┴あとがき 感覚論的転回┴注

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Urmnaf

10
作り手と消費者の距離が近かった時代、作物の色は今ほど重要な情報ではなかっただろうが、遠く離れたところから食べ物が運ばれ、多くの商品から選び、選ばれるようになると、見た目の重要性が増し、着色技術や印刷技術の進歩とも相まって、いわば記号化された「美味しそうな色」が共通の認識としてできてくる。(最近は「映える」色として、そこからの逸脱も起きているが。)何が自然な色か、ということも作られたものだったりする。たいていの農作物は何らか人の手が入ったものだし、何が自然で人工かということがそもそも線引は難しい。2022/01/16

oooともろー

6
とても興味深い考察。食品の色は社会的、文化的、政治的に構築されてきた。視覚の優位性。感覚史。これまで考えたことのない知見にふれられた。2024/05/13

May

4
感覚史の本書では食べ物の色を論ずる。食べ物の自然な(あるべきとされる)色(バナナは黄色等)が生産者や広告代理店によってどのように提示されたのかから始め、これに合わせた農作物、加工食品の生産(バター対マーガリン等)の歴史、小売り段階での色の重要性や見せ方の変化(スーパーマーケット、セルフサービス等)、そして現在の映えまでを扱う。初めに感覚あり、と言うより技術の進歩に合わせて(利用して)来たんだねぇ。”visibleでありながらinvisibleである”色について様々に知ることができ、楽しい読書となった。2024/12/15

のせなーだ

2
アメリカの資本、物質主義の発展の影響の大きさを痛感する。農場の大量生産性、化学肥料の工場化、広いスーパーマーケットの陳列による見た目で商品を選ぶ習慣。トマトケチャップの漫画のような赤。バターの黄色。鮭の身のピンク。ああ、食品と化学、食品着色産業、広告による人工的な色の標準化、商品化。マーガリンなどのフェイク食品に無感覚になっている。自然と五感は人の住まない環境にあるだけか。合成着色料の発達の歴史について詳しい内容となっている。匂いや味を味わう五感経験も人工的に作られてしまった。周辺環境にもたらしたものは。2023/06/17

おっきぃ

2
食べ物の色がいかに歴史的に社会的に構築されてきたものなのか、自然に見える色が決して文字通りの自然ではないことを論じる。マーガリンの色とか、スーパーの展示が色々な技術に支えれられた上での色の見せ方があるとか、内容としては非常に興味深かった。ただ、本として面白いかというとそうではなくて、あまりにも淡々と事実だけを列挙しているように見えて、読んでいて退屈だったのが残念。2023/01/09

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