内容説明
時は天正六(1578)年。伊勢国を治める織田信長の次男・北畠信意は隣国・伊賀国への侵攻を計画していた。いち早く察知した伊賀国人たちは、防衛戦の準備を始めるが、内通者の存在が疑われ、戦の帰趨は読み切れない。しかも相手は大軍だ。四万四千対三千という絶対不利の戦いに生き残りをかけて挑む伊賀国人の戦術と駆け引きは、どのような結果を導くのか。史実の裏で運命に翻弄された若武者たちを描く、著者初の長編歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
102
「百姓の持ちたる国」とは一向一揆の加賀ではなく、天正期の伊賀にこそふさわしい名ではないか。他国や宗派の支援を得ず、最盛期の信長に正面から立ち向かったのだから。山がちの地形を利したゲリラ戦で最初は勝ったが、総力を挙げた織田の物量作戦に先が見える者は敗北を悟る。ここで強力な指導者がいない欠陥が露呈し、伊賀国衆は各個撃破され追い詰められていく。そんな表の戦いとは別に、伊賀の若者アラタは家族や仲間や恋人を守るため敵を斬り続ける。多くの流血を招いた戦いだったが、故郷のため命を捧げた民衆の血で描かれたドラマに思えた。2022/06/22
ポチ
46
天正伊賀之乱。サクサクと一気に読めたので面白かったのだろうが、あまり心に残らなかった。2022/04/19
coldsurgeon
6
天正伊賀の乱を描く歴史物語。伊賀一国が織田軍と真っ向からぶつかり、その凄まじい戦い方を世に知らしめた。しかし、どのようにして、敗北の中、生き延びたかは知らなかった。時の勢いに乗じて動くのではなく、その先を見据えて、戦略を練り、生き延びる方略を考えていた者たちがいた。とても面白く、一気読みだった。2022/05/31
烏骨鶏
2
伊賀が信長に滅ぼされた時の戦を巡る作品。 この方の時代物は初めてだったが、読みやすかったと思う。時代が大きくうねった時期。しのびといえど隠れ里の人々はあまりに純朴に描かれる。短い時期ながら心を通わせた人との結末が痛ましい。最後の最後に次ぎの世代をつなぐ為、様々な思いがあったこと、相手にそれを受け入れさせる為の深謀遠慮がすごいとおもった。2022/05/20
chuji
2
久喜市立中央図書館の本。2022年3月初版。初出「小説宝石」2020年11月号~21年11月号。天正六年(1578)と天正九年(1581)に伊賀国で起こった「天正伊賀の乱」が題材。著者によると「ウクライナの抗戦がポジティブな歴史として後世に残るよう願っています。」とのことでした。2022/04/13