内容説明
芸術家の道を諦めた中年バツイチの正道。心機一転、八ケ岳山麓に移住するが、本場イタリア仕込みの腕を振るった女神像は、あらぬ場所に置かれてしまう。それでも注文には心を込めリアルな彫像を造った。だが耳を疑うことが起きた。喋るというのだ、肖像が……。古刹の訳あり仕事から、亡き両親の像、大胆な裸体彫刻まで、珍現象が巻きおこす人間模様をからりとしたユーモアで笑い飛ばす傑作。(解説・鵜飼哲夫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
百太
26
なんとなく面白くて、なんとなく救われる。そんな年代になってるなと思います。篠田さんの本、好きです。終章部分がとくに。2022/05/24
イシカミハサミ
14
あらすじに作った銅像に魂が宿る、 とあるのだけれど、 実際にそういう話になっていくのは3章の終わりから。 50代。鳴かず飛ばず。妻に去られ。姉にどやされ。 主人公の境遇をしっかりと植え付けられてからはじまる物語。 ある意味では短編ミステリーのように、 章ごとに現れる人の人生を掘り下げるような構成。 ではあるけれど、永久を刻み込む像には、 これまでだけでなく、これからも宿る。 解説にもあったけれど、なんとも立体的な物語だった。2022/05/22
Masakazu Fujino
8
非常に楽しく読んだ。篠田節子氏、なかなか面白いです。この人の作品を初めて読んだが、人間が生き生きとしている。2023/04/19
のじ
6
文庫の裏のあらすじを読んで「えーこれって面白いのかな・・・」と心配したのですが、篠田さんにははずれがない。くっきりと予想を裏切って面白かった。ニヤニヤしたりちょっとじわっときたり。主人公は不器用ながらも他人を思いやり支え合って生きていて好感が持てる。全体的にあとあじの良い話でした。物語の舞台は私の住んでいる県の某市だろうと思うんだけれど、まったく違和感がなく、町の空気感やそこに住む人々の暮らしぶり、言動がものすごくリアルで、わかる!どうしてここまで描けるんだろう?とおどろきました。2022/05/10
Jimmy
4
篠田さんは芸術ネタも得意だがこの彫刻家というのはまた妙なところを狙った、と思って読み進めましたがこれがロズウェルの再来!って感じのドタバタ劇の静か目、おもしろかったです。そしてラストがまたとんでもなく良い話で終わる、ってのももう手練れの技。しかしまあこの主人公キャラのゆるさはもう脱力モノ。お姉さんのキャラも最高で。後妻業のオチももう素晴らしい。2022/07/12