内容説明
長崎の出島が「悠久の命」をつないだ! 2億年近く生き延びたあとに絶滅寸前になったイチョウが、息を吹き返し、人に愛されてきたあまりに数奇な運命と壮大な歴史を科学と文化から描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
65
あまりに身近にあるために、「生きている化石」として、どんな価値があるのか、知らなかった点がすごく多い。イチョウに似た木は、他にどこにもない。被子植物にも、針葉樹(裸子植物)にも似ていない。孤高の木である。世界に1種だけ。すでに恐竜のいたころから衰退がはじまっていて、現世には奇跡的に生き残った。中国から朝鮮・日本に伝わり、長崎の港からヨーロッパへ。今は世界中に広まっている。その歴史と文化、利用について徹底的に網羅。著者もそうだが、人間はイチョウの木が好きなんだな。秋にふさわしい木。ギンナンの茶碗むしも格別。2021/10/15
やま
13
いやあ、すばらしい!銀杏のことで37章400頁もの本ができるなんて。◇化石のこと、どうやって化石から銀杏を特定したか、銀杏そのものの話、日本のこと、中国のこと、ヨーロッパでの保護の話、アメリカで保護の話、そして、最後の2章は種を守ること、これからの植物に対する人間の役割について。◇全編にわたって銀杏への愛が感じられるうえに、生物学的な専門的な内容も書かれている。解説を元東大教授の長田氏が書かれているように専門的な内容も正確を期している。興味深い本でおすすめ。2023/01/29
Mits
2
身近な木ではあるけれど、植物界のカモノハシと言われるほど変な植物であるらしい。確かに、そういえば「イチョウの仲間」である木なんて聞いたことがない。実際、そんなものないらしい。植物としての特徴、起源と来歴、人間とのかかわりなど、多岐にわたる記述で非常に面白かった。2022/11/01
中山りの
1
イチョウはヒトが存在するはるか前から存在していた。人類が進化してきた過程を、イチョウを含めた樹木、植物は酸素を作り出しながら見守ってきた。ときには避難場所、ときには燃料、ときにはその実を食糧として身を捧げながら。一方で人類はイチョウを愛でて、その絶滅危機を救うことになる。 そうやって地球ではさまざまな植物や動物が相互関係をもちながら生きてきた。 そうしてふと身近なイチョウを見ていると、冬のその丸みを帯びた樹形に、愛おしさのような畏怖のような感情を抱いた。 そんなことを感じさせてくれる良書。2025/02/05
S
0
身近なイチョウがここまで興味深く、ドラマチックな植物だとは全然知らなかった。植物としてのイチョウの生態、2億年前からの進化の歴史、人類との関わりによる文化的な側面、近代以降の日本から欧米への再拡散の様子など、取り扱う内容は幅広い。イチョウをじっくり観察し、もっと楽しんでみようと思わせる本。2024/04/08