内容説明
映画監督を志す守凪了子(カミナギリヨーコ)は舞浜南高校に進学し、憧れの映画研究部に入部する。仲間たちとともに、AIを駆使した長編映画を製作し、コンテストに応募するのだ。作品提出期限は夏休み最終日。だが、撮影を続けるなかで、了子たちはあちこちで奇妙な齟齬に出会う。それはこの高校だけでなく、舞浜という街自体に隠された〈世界のほころび〉だった――。新進気鋭のハードSF作家が新たな着想で綴るゼロ年代最高の本格SFアニメ『ゼーガペイン』の語られざるエピソード。巻末に文庫版ボーナストラックを加えた。/【目次】プロローグ/第一章 なぜ守凪了子(カミナギリヨーコ)は映画監督になれないのか/第二章 ホログラフィック・ノイズ/第三章 守凪組/第四章 n番目の祝祭/第五章 ダークディスク/第六章 シェルタリング・サマー/第七章 からまる夏の守凪了子/第八章 エントロピック・アシンメトリ/第九章 舞浜南高校映画研究部/第十章 オケアノス――世界の海/第十一章 夏を継ぐもの/第十二章 831/エピローグ/ポストクレジットシーン ホロニックワールド・エンタングルメント/単行本版あとがき/文庫版あとがき/解説=花澤香菜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
芳樹
31
SFアニメ『ゼーガペイン』のヒロイン守凪良子(リョーコ)の視点で語られるスピンオフ作品。舞台はADP後半のあたりでしょうか。映画監督を目指すリョーコが、仲間たちとともにAIを駆使した映画作りにのめり込む物語。仲間たちとの友情や喧嘩そして恋。青春まっただ中の高校生たちが過ごすひと夏の出来事がぎゅっと詰まった素敵な作品でした。そして、あの世界を生きるリョーコが抱えた思いが切なく心に刺さって、うるっとなる。巻末のリョーコ役の声優・花澤香奈さんの解説も、彼女の作品とリョーコへの愛が伝わってきて感激しました。2022/06/21
Porco
17
実は『ゼーガペイン』はリアタイしていたので文庫を見た瞬間二度見した。気がついたら舞台の2022年が過ぎ、認識が正しければ意識がデータにはなっていないようだ。まず印象としてはライトノベルらしくないライトノベル。序盤から中盤にかけての無数の引用は伊坂幸太郎みを感じたが、それもなんだが0年代のアニメで多用された記憶があるのでとても懐かしい。何より解説の花澤香菜さんの本作に対する重い思いよ…2023/11/29
ほたる
11
「ゼーガペイン」は未視聴、でもめちゃくちゃ面白かった……またひとつ終わらない夏の物語に出会ってしまった。良い、凄く良いこれは。そういう物語だったんだ。この世界の中で、映画を撮り続ける、そのことの意味が深く深く突き刺さってくる。知らなかったからこそ、明かされた真実に素直に驚かされ、それを受けてさらにきちんと展開していくストーリー、最高でした。あぁ、やっぱり終わらない夏の物語は青く素敵なものだ。2022/05/23
huraki
11
舞浜南高校の映画研究部に入部した守凪了子が、映画の撮影中に出会う違和感や世界のほころび。なぜ守凪了子は映画監督になれないのか?映画研究部部長に告げられた言葉や舞浜という街の秘密。やがて明らかになる真実は信じがたいものであり、なんて残酷なのだろうと胸が張り裂けそうになった。それでも守凪了子は映画監督を夢見て映画を撮り続けるのだろう。この世界のことを、あるいはまだ見ぬ世界のことに思いを馳せ、今という瞬間をフィルムに収めるために。思いもよらない着地点を迎える、鮮烈で忘れられないひと夏の物語だ。2022/04/30
ほたる
10
「冗談か。冗談みたいなものさ。世界を、夏で覆って……守ろうとするなんて」 アニメを見たからこそ分かる、いかにスピンオフとして優れた作品であったか。キャラが出てくるだけでワクワクし、この世界観を知ってしまっているからこそ想いを馳せてしまう。では次は!2024/08/06