内容説明
出会いの大切さとは,「治療者がクライエントを瞬時に観察し,クライエントの何気ない言葉やささやかな思い出,そして微かな興味や関心などの素材をもとに,その瞬間に,クライエントの体験してきたことやそれに伴う思いを考え抜くこと」(著者識す)。
村瀬嘉代子の「心理臨床」は,我が国の臨床心理学において他に比較しがたい重さを持っている。本書には,心理臨床の技術的側面を考える優れた論考を収録した。
卓抜な着想,迸るような臨床センスの煌めきが溢れ,このうえもなく現実的な臨床的治験が全編に亘ってちりばめられており,本書の各論考からは,仕事を通してよく生きることと学ぶこととは不可分であることが伝わってくる。すべてのセラピスト,心理援助者に読んでほしい本である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
alto弾き
1
クライエントである小さな子ども、しかも過酷な状況にある「問題児」や「障害児」に対しても丁寧な言葉遣いで接し、繊細な心の動きを察知し共感する村瀬先生。それでいて大胆な発想や行動力を発揮して、子どもの親や教師、臨床を学ぶ学生を変容させていく。臨床の「枠」は厳重に守るべきものとして学んでいるが、本当の臨床を行おうとすると、村瀬さんのように発想を行動に移して、時には枠をはみ出るような行いも必要なことがあるのではないか。教授室や面接室の椅子に座っているだけの人ではない、実践の人だと感じた。2025/06/06
みみこ
1
支援者であり、1人の人間でもあること。被支援者であり、歴史も感情もある1人の人間でもあること。何かあれば反転した関係だったかもしれないこと。驕らずに進んでいくこと。2025/03/03