内容説明
「あのな、ええことおせちゃる。」――鬼気迫る母親の一人語り「抜髪」、平林たい子賞、川端康成賞受賞の表題作二篇ほか、私小説の真髄を示す佳篇を精選。さらに講演「私の小説論」と随筆一篇を併録した直木賞作家の文庫オリジナル選集。
〈巻末エッセイ〉高橋順子
〈解説〉井口時男
■目次
木枯し/抜髪/漂流物/変/武蔵丸/狂/「鹽壺の匙」補遺/直木賞受賞修羅日乗(随筆)/私の小説論(講演)
〈巻末エッセイ〉けったいな連れ合い(高橋順子)
〈解説〉井口時男
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フリウリ
4
最後の小説論は「読めない」と思いましたが、話し言葉のせいではないかと思います。些細なつまらないことでも、すぐれた書き言葉のおかげで、知らず読めてしまうというのは、驚くようなことであると思いました。賞が取れずに五寸釘で人形を打ったり、直木賞で男子の本懐を遂げたなどと声高に言うのは、どこまで本気なのかわかりませんが、本気とすれば気味が悪い。しかし、そのような気味の悪さが読者に惹起されることを、著者は喜びとしていたのかもしれない。穿ち過ぎかもしれませんが。刺さるところは人それぞれ。82024/07/24
Ryu
4
車谷は裏返った世界で生きている。蛙が内蔵を口から丸ごと出す。べろんと中身が外身になる。そういう肉壁を普通は意識せずに生きているが、それが手に触れられるのがこの小説の世界である。論理、倫理、普通なら大切&大事なこれらのことが、べろろんとびらびらしてしまっていて、苦悩する悪の魂が這い回る様子の実況中継に言葉は奉仕する。げりりん。こんな小説を読んではいけません。えぺし。2022/07/11
バールの様なモノ
3
読み進めるほどに、面白かったし怖かった。 特に私の小説論に感銘を受けた。2024/11/20
Jackie
2
全てをさらけ出していくと言うか、自分と周囲の人を切り刻んでいくというかなかなか読む側も相当なエネルギーが必要な読書体験だった。狂気を感じさせる一人語り形式の作品はものすごいインパクトで怖かった。包み隠さず色々恥ずかしいことも書かれてそうですが、順子さんと仲が良さそうで良い相手見つけましたね。最後の小説に対する考え方の章も信念というか欺瞞に対する真摯さというかよく伝わって来て面白かった。担当の編集者さんは何書かれるか分からないし怖かったろうな(笑)2025/06/13
dra-wrappin
2
この人の私小説は癖になる。2022/09/18