ちくま新書<br> 全国水平社 1922-1942 ――差別と解放の苦悩

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ちくま新書
全国水平社 1922-1942 ――差別と解放の苦悩

  • 著者名:朝治武【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2022/02発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074539

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内容説明

全国水平社が創立されてから、2022年で100周年を迎える。その存在は20年間であったが、近代日本社会に存在する部落差別からの解放を、部落民自らが求めて結成した画期的な社会運動団体である。戦時体制下に組織は消滅するが、苦悩に満ちたその軌跡は、自由と平等を願う私たちに多くの教訓を与えてくれるはずである。

目次

はじめに──全国水平社創立一〇〇周年
全国水平社創立大会
綱領・宣言・則・決議
大きな社会的反響
本書の意図と構成
序章 近代の部落問題
1 部落問題の成立
封建的身分制の廃止
部落の構造的変化と差別的視線
部落差別の顕在化
「特殊部落」という呼称
2 部落問題の社会的波及
部落改善運動の活性化
政府と府県の部落対策と融和運動
米騒動と部落問題への社会的関心
部落民の自覚と部落差別に対する抗議行動
第1章 全国水平社の創立
1 全国水平社創立の主体形成
部落青年の自主的決起
同志的結合の拡大
融和運動との対決
幅広い協力者の支援
2 全国水平社創立の思想的背景
社会主義とヒューマニズム
民族自決と人種差別撤廃
解放と改造の大正デモクラシー
部落改善と融和への批判
3 組織構成と影響力
組織形態の変化
府県水平社と広域水平社
水平社数と加盟人数
婦人水平社と少年少女水平社
第2章 社会・無産勢力・権力
1 社会からの視線
社会主義者と社会運動家
自由主義者とジャーナリスト
文学者と民衆
保守政治家と内務官僚
2 無産勢力と議会進出
農民組合と労働組合の組織化
普通選挙をめぐる分岐
無産政党をめぐる対抗
選挙闘争と議会進出
3 支配権力と融和政策
警戒した内務省と司法省
危機感を表した保守政治家
政府の融和政策と中央融和事業協会
水平社を承認した融和運動
第3章 部落差別と糺弾闘争
1 徹底的糺弾の成立
徹底的糺弾の論理
大正高等小学校差別糺弾闘争
官憲からの危険視
社会からの危惧
2 社会的糺弾への転換
社会的糺弾の論理
軍隊内の部落差別
福岡連隊差別糺弾闘争
陸軍省の差別糺弾認識
3 人民融和的糺弾への再転換
結婚をめぐる部落差別
高松結婚差別裁判糺弾闘争
司法省と融和団体の対応
人民融和的糺弾の論理
第4章 日本と世界への発信
1 近代天皇制と身分制
天皇制と錦旗革命
天皇直訴事件の衝撃
封建的身分制の廃止
華族制度廃止の要求
2 日本の被差別マイノリティ
在日朝鮮人に対する支援
在阪沖縄人からの注目
アイヌ民族からの賛意
ハンセン病患者への影響
3 海外の被差別マイノリティ
水平運動の国際化と海外の新聞報道
労農ロシアの承認
朝鮮衡平社との連絡と提携
排日移民法反対運動
第5章 思想的潮流と路線対立
1 共産主義と無政府主義
共産主義派の全国水平社青年同盟
無政府主義系の全国水平社青年連盟
熾烈なアナ・ボル対立
統一と団結の回復
2 新共産主義と社会民主主義
新共産主義系の全国水平社解消論
新共産主義系の非現実性と破綻
社会民主主義系の形成
社会民主主義系の行動
3 保守主義・国家主義・中間的潮流・部落民
保守主義の南梅吉
アジア主義的国家主義の平野小剣
独自路線の栗須七郎と中間的潮流
部落解放を望む部落民
第6章 全国水平社の消滅
1 「満州事変」と反ファシズム
帝国主義戦争反対
部落委員会活動という闘争戦術
反ファシズムと人民的融和
西光万吉の国家社会主義
2 日中全面戦争と水平運動の分岐
戦争協力と新生運動グループ
天皇制に立脚した国民融和
東亜協同体建設と国民運動
部落厚生皇民運動の分派行動
3 アジア・太平洋戦争と全国水平社消滅
大和報国運動の破綻
同和奉公会への参入
全国水平社の法的消滅
現代部落解放運動への継承
参考文献
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かんがく

10
日本史の教科書では部落解放運動の組織として「光あれ」の宣言が紹介される程度であるが、朝鮮人や沖縄人などのその他のマイノリティとの協力や、自由主義、共産主義、無政府主義、民族自決主義、時には国粋主義など様々な思想の影響を受けながらその運動を展開させていったことがわかり興味深かった。2024/09/17

U-Tchallenge

3
全国水平社ができ100年となる。この節目に出版された一冊。全国水平社や水平社運動について網羅的に理解できる内容となっている。歴史を知ることで現在や未来へとつなげられる、と思っている。ただ歴史の部分を読むのはなかなか骨が折れるものであった。序章と最終章である6章は、現代の部落解放運動にも触れられているので、そこだけでも読む価値はあるように思った。2022/05/10

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