内容説明
本書は、新発見の、あるいはこれまで省みられなかった資料を利用し、おざなりの(リベラル歴史家に都合の良い)解釈で終わっている重要事件の深掘を試みるものである。たとえば、第二次世界大戦の前哨戦ともいわれるスペイン内戦だが、その実質は共産主義政府(スペイン共和国人民戦線政府)に対する反共産主義勢力(フランコ反乱軍)の戦いであった。しかし、一般書ではスペイン政府を「共和国」と記述するばかりで、当時の共和国が実質「スペイン社会主義共和国」であったことを書かない。また、第二次世界大戦期およびそれに続く冷戦期において、米民主党政権(ルーズベルト政権およびトルーマン政権)内に多くのソビエトスパイが潜入していたことを示すヴェノナ文書が発表されており、ソビエト崩壊後の1990年代から多くのソビエト側資料も出ている。これにより、一般歴史書の記述の修正が必要だが、リベラル歴史家による積極的な解釈の見直しの動きはない。本書によって、読者の歴史観は少なからず立体化し、合理的歴史解釈醸成の一助となるだろう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
48
本書の正式な書名は『第二次世界大戦とは何だったのか』、奥付の発行日は3月7日になっている。少し未来を先取りするような形の読書であったが、戦間期から第二次世界大戦後までの歴史が、田舎芝居の筋書きのように、当時の大国首脳という大根役者!の面々によって演じられていった様子が詳細に綴られ、超弩弓の面白さである。もっとも芝居の舞台が全世界であること、敵役に日本が含まれることを考えれば、面白がっている場合ではない。本書の主題は、第一次世界大戦後の世界を、更なる大戦争へと駆り立てたイギリス、アメリカ、ソ連の首脳と彼らを2022/02/25
KAN
19
日本の近現代史で大きなトピックは当然、第二次世界大戦による敗戦であるのは確かだけれど、いまだに東京裁判史観とか、なぜ大東亜戦争と呼んだのかとか、米国に原爆を2発も落とされるまで終戦を迎えることができなかっったとか、日本の愚かさを、軍部の横暴とかばかりが強調され、真の意味での戦争によって何が変わったのか、反省すべきなのかが、さっぱりわからない。本書はグローバルな観点でその点を考えさせてくれる。2022/03/31
大粒まろん
17
これが本当なら、ホロドモールもホロコーストもABCD包囲網も原爆投下もその場のノリで行われ。どんな国のトップも勝手に創造した大いなる見えない存在に恐れ慄き、空気を読み(なんの?)圧を恐れて悪魔と契約していく鬼畜バカばっか。2023/08/14
ちくわ
16
【♪】結局通勤時間だけでなく、ウォーキングや会社の昼食時も聴読を…耳の空き時間は意外と転がっており、概算だが月で30時間弱になり驚いた。 では感想を…今の世界はつくづく常任理事国の掌中にあると感じる。一方先の大戦で最後に降伏した日本は、今でもその事実が尾を引いてる感が拭えない。勝者=絶対善、敗者=絶対悪という歴史的価値観に、自分は昔から違和感を憶えていたが…そんな疑問に本書は少し応えてくれたかも。ただ自分は中庸なので本書は正しい!とかは無く、網羅的に事実を知った上で二元論のド真ん中を貫ければと願っている。2024/07/16
みのくま
10
本書はチャーチルやFDR、スターリンなど連合国の人物像にかなりフォーカスした歴史観が語られる。特にチャーチルに関しては、チャーチルの娘がアメリカの駐英大使にハニートラップを仕掛けていた事がアメリカの欧州戦線への参戦の決定的要因の一つであるとされる。勿論ある特定の人物が歴史を動かす事はあるのだろうが、果たしてそんな分かりやすい事が起きるのであろうか。本書の内容に妥当性があるのかどうかはぼくには判断できない。ただ、歴史の裏側ばかり探求すると陰謀論と区別が付かなくなる。この辺りはバランスが難しいので思案中である2024/09/12