内容説明
編集者ロベール・デュボワが週末に原稿の束を抱えて帰ることはもうない。持ち帰るのは何本もの原稿の入ったタブレットのみだ。紙の本は消えてしまうのか? 読者は何を求めているのか? なじみのレストランでの、ワインと料理に舌鼓を打ちながらの著者との打合せも、もうなくなるのだ。今や、ワインよりビール、コーラとハンバーガーの若者たちが中心となり……彼らの提案の新鮮さに驚かされもする。おまけに行きつけの昔ながらのビストロはスシ・レストランに身売り! 紙に埋もれて生きてきた昔ながらの編集者デュボワが直面する時代の変化の嵐。当惑そして諦め……しかし軽やかに飄々とそれらを超越する彼。変わりつつある出版界と読書人たちに捧げる、小品でありながらも風格ある一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
けんさん
31
『廃れる伝統的出版界 デジタルとの融合の果てに…』 デジタル出版時代を先取りした2012年の作品。ベテラン編集者の元に、原稿などの入ったタブレットが手渡されるところから物語が始まる。単に紙 vs デジタルの対決と考えず、デジタルの時代に合った編集を見出そうと若者と交流する主人公の柔軟さに先見の明を感じる。2022/07/20
tetsubun1000mg
16
フランスの老舗出版社のベテラン編集長が主役。 フランスの文芸っぽい雰囲気で進みながらタブレットを渡されて触っているうちになじんで便利さに感心する。 なんだか時代改変SFを読んでいるような気がしてくるのは、作者が超ベテランの編集者で作家だからなのか。 フランスも出版業界の苦悩は同じのようだが、文章や会話、登場人物がおフランス風で楽しめるし独特な味がある。2022/05/01
ののまる
11
やっぱ私は本は紙派。紙(本)の匂いや重さ、手ざわりが好き。2022/04/04
スプリント
10
フランスのベテラン編集長が主人公。 フランス出版界ならではエピソードもあり 馴染がないことも多く新鮮でした。2024/05/21
きゅー
10
原書は2012年に刊行されている。これは世界的に電子書籍の普及が広まっていった時期にあたる。フランスの出版界にあっても、本の未来についてさまざまな議論を読んだことだろう。物語は、とある出版社の社長がタブレット端末を手にするところから始まる。昔気質の編集者でもある彼が、新しいテクノロジーに触れて新規蒔き直しを図ろうとする。著者は語り手と同様に編集者であり、かつ長年ウリポの代表を務めてきた人物でもある。そのためフランスらしい軽やかな小説の中に、邦訳での再現は困難だが言語的遊戯が仕組まれているのも特徴の一つだ。2022/07/11
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