内容説明
祖先、肉親、自らの死の翳を見つめながら、綴られる日々の思索と想念。死を生の内に、いにしえを現在に呼び戻す、幻視と想像力の結晶。晩年まで勁健な筆を奮い、文学の可能性を極限まで拡げつづけた古井文学の極点。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
68
ひとつながりの流れる思考を、そのまま言葉に写し取る。それこそが作家にとって「生きる」ことそのものだったのだろう。すべてはもう過去のものだが、作品は生き続ける。どこか圧倒されるような気持ちで読んだ。誰もが静かに、気づかぬまま時の流れのまま、老いてゆく。2022/03/01
優希
38
生前最後の短編集で濃密さがあります。死へと向かう想いが平凡な日常やふとした瞬間に見えるようでした。2024/07/25
原玉幸子
13
自身の病苦、知人の死、戦争の記憶、自然への思い、知覚の衰え等々、厭味も批判もないので全く不愉快ではありませんが、そうした老境の語りにはなーんの感慨もなく、頁を繰るのに「時間の無駄、時間の無駄……」と呟く、タイパ最悪のエッセイでした。(でも、購入した本は読み切る貧乏性は抜けず。)読み乍ら、老境繋がりで、亡父が教職員退職後に書き綴った粗雑な回顧録を思い出しました。「親父。本気で何かを書く気があるなら、老境の古井由吉の文章ぐらいを手本にせぇよ」と、これ又どちらにも失礼な呟き。(●2022年・春)2022/04/09
真琴
9
古井由吉の生前最後の連作小説集。静寂な世界。その世界に身を置くのが心地良い。老いとは何か、生きるとは何か、人生を閉じていくとは何か。そんなことを考えた。私は上手く老いを受け入れ、老いていくことが出来るだろうか。人生後半に入ったが自信がない。2024/01/16
真琴
6
読書会課題本につき再読。古井由吉の文章に触れると、日本語の美しさに浸れる。2月18日は、古井の命日。2024/02/14