内容説明
地元から出ないアラサー、女子が怖い高校生、仕事が出来ないあの先輩……“男らしさ”に馴染めない男たちの生きづらさに寄り添った、切なさとおかしみと共感に満ちた作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
108
就職してからの迷いの大半は現実逃避の言い訳もあると思う。多分自分はあまり考えないままズルズルサラリーマンをやってきたのだと思う。彼は本当は役者になりたいが、サラリーマンになってしまった。まるで俳優のような絵になる先輩が宴会の途中で逃げていいからと言ってくれたあの時。役者として成功してあの時を振り返っている。むしろこの先輩の方が役者として一枚上。こんなところで営業しているより舞台に上がった方が成功するようなオーラがある。ここにいてはもったいない人。そんな人、世の中には他にもたくさんいるだろうなとも思う。2021/12/09
エドワード
54
女性の生き辛さを描く小説は多い。男性の生き辛さをよくもビビッドに描いてくださったネ、山内さん。そうなんだよ。多様性の時代なんて建前だけ、男は働いてナンボという価値観はびくともしない。どんなに苦手でも、どんなに煙たがれても、仕事をしなきゃならんのよ。新入社員よ、仕事の次は家庭だよ。家庭を持ったら子供だよ。次は家を建てようよ。これが正しい男のクラブ。入りたくない?じゃあ、今すぐ逃げなさい!と言って逃がしてくれた館林先輩には感謝だ。仕事が全く出来ない角岡君に「仕事をしているふり」を教えた千田さんもエライね。2021/12/22
venturingbeyond
32
さらりと読了。帯に「"男らしさ"に馴染めない ー 」とある通り、ホモ・ソーシャリティの下では違和感なく受け止められるティピカルな「男」の物語を、違う視座から描き直すと...、という短編集。中でも『あるカップルの別れの理由』、『ぼくは仕事ができない』の二篇が特に秀逸。『さよなら国立競技場』も面白かったのだが、32頁の「~ベスト四まで進んだのだ。準々決勝では帝京高校に負けたけど、...」との一節に、少々げんなり。単純な誤りなので、校正が機能してないところに、昨今の出版事情か透けて見えるようで、残念でした。2021/12/22
ゆきらぱ
32
1989年を愛する私なので「1989年から来た男」に出会えて嬉しい。その内容も良かった。山内マリコさんはどこか切なくて良いです。最後の話に「ネットフリックス廃人」の父親が出てきた時はどきーんとした。私もこうなる、いやもうなってる。2021/12/08
小夜風
26
【所蔵】タイトルとあらすじから今流行りのジェンダーレスな男子の話かと思ったらちょっと違った。1話1話がとても短い22の短編集。いろんな話があったけど、どれも男らしさ女らしさという型に嵌められて、上手く嵌まれずに苦しみもがいている人たちの話だった。読んでいて自分の子どもたちや連れ合い、実家の親たちの話が描かれているように感じた。何より自分自身のことも…。こんな人生つまらないな〜とか、もっと上手く生きられたらな…なんて思っても、結局どの人生を選んでも同じ自分だったのかな。情けなくて滑稽で、でも何だか愛おしい。2021/10/25