内容説明
グローバル化により過熱する漁業と地球規模の気候変動は、世界の海と魚に多大な影響をもたらし、将来の世代に十分な魚を供給できるのかという懸念が広がっている。ネレウスプログラムは、生態学・地理学・資源管理学・人類学等の多様な分野から、海と人間社会の未来に必要な持続可能な漁業と海洋保全の実現のため、問題解決に挑む。
目次
謝 辞
序論 海の未来を予測する[太田義孝]
第1章 変わりゆく海洋システム:総論的考察[チャールズ・ストック,ウィリアム・チェン,ジョルジ・サルミエント,エルシー・サンダーランド]
1.1 化石燃料の燃焼と海洋酸性化
1.2 海水温上昇,氷の融解と変わりゆく海洋循環
1.3 海洋の生産性ベースラインの変化
1.4 海中溶存酸素濃度の低下
1.5 海岸線の変化と海洋汚染
1.6 変化する海洋の理解および予測についての見通し
第2章 海の季節性の変動:過去,現在および未来[レベッカ・アッシュ]
2.1 過去:海洋生態系研究における生物季節学の歩みの概要
2.2 現在:海洋生態系に対する気候変動の影響の「状況証拠」としての生物季節学
2.3 未来:これから何が起きるのか
第3章 海洋における極端な気象現象[トマス・フレーリヒャー]
3.1 海洋熱波をもたらすものは何か
3.2 温暖化する海洋
3.3 頻度,規模,期間および強度が増す海洋熱波
3.4 今後の変化
3.5 海洋熱波の影響
3.6 今後の展望
第4章 変わりゆく海洋における水産物のメチル水銀汚染[コリン・ザックレイ,エルシー・サンダーランド]
4.1 はじめに
4.2 魚の体内でメチル水銀が蓄積されるまでの各段階
4.3 変わりゆく海洋における魚の体内メチル水銀
4.4 結論
第5章 資源利用されている海洋生物グループの気候変動下での現在および将来の生物地理学[ガブリエル・レイゴンデュー]
5.1 はじめに
5.2 海洋の生物区分
5.3 資源利用されている海洋生物の多様性の分布
5.4 気候変動が海洋生物種の生物地理学に与える影響
第6章 気候変動と適応進化:変わりゆく世界で個体のパフォーマンスを個体群の持続に結びつける[ジョーイ・バーンハート]
6.1 代謝を細胞から生態系まで拡大する
6.2 温度は生物の代謝速度に制約を与える
6.3 個体のパフォーマンスを個体群の動態と結びつける
6.4 進化論を代謝スケーリング理論に統合する
6.5 今後の展望
第7章 気候変動への適応と空間的な漁業水産業管理[レベッカ・セルデン,マリン・ピンスキー]
7.1 種の分布と漁獲可能量の過去,現在および将来の変化
7.2 水産業が受ける影響
7.3 空間的な漁業水産業管理の課題
7.4 種の分布の移動と気候変動に備えた管理のためのツール
第8章 気候変動,汚染物質および伝統食:北極圏の食料安全保障を守るための地域社会との協働[ティフ=アニー・ケニー]
8.1 水産物,食料安全保障,公衆衛生
8.2 変容する北極圏のコミュニティ
8.3 気候変動と伝統食
8.4 汚染物質と伝統食
8.5 食料安全保障の改善に向けたコミュニティとの協働
第9章 世界の海洋ガバナンスのための沿岸域先住民データ[アンドレス・シスネロス=モンテマヨール,太田義孝]
9.1 世界の海洋における先住民
9.2 グローバルデータの適切な利用
9.3 海洋政策への先住民の声の反映
第10章 グローバルな水産業界が取り組む企業の社会的責任:その可能性と限界[ウィルフ・スワーツ]
10.1 はじめに
10.2 水産業界における民間ガバナンスの台頭
10.3 自主認証基準と企業の社会的責任
10.4 考察
10.5 結論
ほか