連帯の哲学 I - フランス社会連帯主義

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連帯の哲学 I - フランス社会連帯主義

  • 著者名:重田園江
  • 価格 ¥3,520(本体¥3,200)
  • 勁草書房(2022/02発売)
  • ポイント 32pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784326351541

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内容説明

連帯は、一方に国家の介入を拒否する自由放任主義、他方に革命を標榜する社会主義という深刻な社会分断の中で、自由と社会性の両立を目指す中庸を指す言葉として流行した。社会保障の理念的基礎となった連帯の思想は、実は20世紀福祉国家を再考するための視座をも提供する。思想誕生の現場に分け入り、その現代的意義を探る。

目次

謝辞

はじめに

序章 友愛と連帯――錯綜する同一性と差異
 はじめに
 1 友愛から連帯へ
 2 友愛における差異と相互性
 3 連帯の問い

第一章 エミール・デュルケム(Emile Durkheim 1858-1917)
 はじめに
 1 「分業」という視座――スミスとデュルケム
 2 分業の超経済的性格
 3 機械的連帯と有機的連帯
 4 アノミーと異常形態
 5 自発的な協働の社会
 6 職業組合と機会の平等は両立するか?

第二章 レオン・ブルジョア(Leon Bourgeois 1851-1925)
 はじめに
 1 自然の連帯と人間社会の連帯
 2 準契約quasi-contratと自由な合意
 3 「社会への負債」の真意――衡平の確保
 4 平等と均衡のための諸方策
 5 相互性の向かう先
 6 能力の不平等について

補章一 ピエール-ジョセフ・プルードンと連帯の哲学
 はじめに
 1 プルードンにおける相互性
 2 相互主義の例としての保険――政府の役割
 3 自己利益と相互性
 おわりに

第三章 レイモン・サレイユ(Raymond Saleilles 1855-1912)
 はじめに
 1 産業社会と事故の変容
 2 民事責任におけるフォート
 3 フォートからリスクへ
 4 社会はリスクに満ちている
 5 誰がリスクを引き受けるべきか?
 6 リスクの理論と連帯

補章二 連帯社会における「正常と異常」
 はじめに
 1 デュルケムとブルジョア
 2 サレイユの刑法理論におけるリスク
 おわりに

第四章 シャルル・ジッド(Charles Gide 1847-1932)
 はじめに
 1 ニーム派消費協同組合の形成
 2 協同組合運動史におけるニーム派
 3 ブルジョア消費組合
 4 社会主義組合
 5 ニーム派とロッチデール原則
 6 ジッドと連帯主義
 おわりに

補章三 相互扶助組織の歴史と連帯
 はじめに
 1 連帯の哲学におけるmutualiteの語義
 2 相互扶助組合と職人組合
 3 相互扶助組合とパトロナージュ
 4 相互扶助組合の性格
 5 労災、疾病、失業、老齢の保障――義務か任意か?
 おわりに

終章 贈与と連帯
 はじめに
 1 『贈与論』を取り上げる意図
 2 彼らは奇妙なまでに贈りあう
 3 未開人は合理主義者か?
 4 贈与は自由か?――全体的給付の体系
 5 連帯と贈与
 6 連帯の二側面

おわりに――次なるテーマへ

あとがき
引用・参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Mealla0v0

5
本書でのデュルケムの位置づけは、連帯主義が異質なものとの連帯を目指すという点に重きを置いたもので、このような読みが本書全体のトーンを規定している。ともすれば同質的な圧力と批判されかねない「社会」を、異質なものたちの連帯の場と読み込んでいくこと。ブルジョア、ル・プレーだけではなくプルードン贈与論のやモースも連帯の哲学に位置づけられているあたり、強く感ずるところ。フランス連帯主義に関する研究としても非常に興味深いが、著者の目指す社会像へ向けての議論、そういう規範性が読み取れる。2021/02/27

PETE

1
フランスにおける階級対立を乗り越える連帯のための試みとして、協同組合運動とその思想を解明していく試み。とくに、作家ジッドの叔父シャルル・ジッドの章が興味深い。それでも、終章で取り上げられるマルセル・モース以外は近代経済社会の前提に囚われているという限界があると思う。社会思想の人類学的転回が求められていた、ということなのだろう。2022/03/04

壱萬弐仟縁

0
はじめに、に書かれているように、貧困と格差の拡大は、市場主義の正しい競争があれば解消する、ということへの疑義が提起される(xⅲページ)。同感だ。第一章のデュルケムの『社会分業論』は21年前に永井彰先生の社会学のレポート課題で取り上げたことがあり、懐かしかった。プルードンの相互性、相互主義とは、「自己利益に配慮する と同時に (ここは傍点)他者の利益にも配慮する関係」(85ページ)という。要するに思いやりだ。贈与論のモースがデュルケムを継承したのは銘記しておきたい。2012/09/10

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