内容説明
「管啓次郎は、批評を紀行にしてしまう思想の一匹狼、もしくは詩的なコヨーテだ。 ――堀江敏幸」 「小さな名著と呼ぶにふさわしい。それは、他の誰にも真似できない。 ――若島正」 旧版刊行時、数々の雑誌で取り上げられ静かな話題を呼んだ読むことと旅することをめぐる傑作エッセー集新装版に。いつまでも手元に置いておきたい、本を読むすべてのひとへ向けた1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
87
本を読む、ということの奥深いところまで連れて行ってもらうと、いったい自分はいつも何を読んでるのだ、と愕然とする。また一方で、人の読み方を羨ましく思ったり憧れたりしたとしても、どう転んだって自分の読み方しかできないわけで、それで(が)いいんだ、と嬉しく思う。誰かから刺激や影響を受けた受けないに拘らず、そのとき自分が手にした本を自分の速度で読む。自分の中で何かが反応する。様々な感情や想いも湧き起こる。読んだことを忘れてしまってもきっと痕跡は残り、自分を豊かにしてくれている。ああ、本を読むことって素敵だ。興奮!2022/05/20
harass
71
詩人・思想家の著者のエッセイ。読書についてが主。実に鮮烈な言葉に声を失う。「本に『冊』という単位はない。あらゆる本はあらゆる本へと、あらゆるページはあらゆるページへと、瞬時のうちに連結されてはまた離れることをくりかえしている。一冊一冊の本が番号をふられて書棚におさまってゆくようすは、銀行の窓口に辛抱強く並ぶ顧客たちを思わせる。そうではなく、整列をくずし、本たちを街路に出し、そこでリズミカルに踊らせ、あるいは暴動を起こし、ついにはそのまま連れだって深い森や荒野の未踏の地帯へむかわせなくてはならないのだ。」2016/12/26
zirou1984
49
すべての悩める読書家諸君に対する叡智と慈愛の込められた、素晴らしい表題。翻訳家としても詩人としても活動する著者の読書エッセイ集なのだが、読み進めれば進むほど果たして著者の行っている「読書」とは本当に自分の知っている読書と同一のものなのかと驚愕させられてしまう。本を読む、只それだけの行為がこんなにも自由で豊潤で、世界を広げさせててくれるのだという驚き。言葉が持つ可能性を、世界の多様性の優しさを、読書の限りないよろこびを。心配するな、大事なのは本そのものではない、それを読んであなたの生に何が起きたかなのだ。2017/03/25
踊る猫
37
この本と出会ったことは、ぼくの中の読書観を変えた。ぼくはそれまでせっせと貧乏性を発揮して読むことで何かを得ること、血肉化することを目論んでいたのだと思う。だけど肝心なのはその「本を読むこと」と「生きること」を渾然一体と成して、いわばぼく自身が(相当にこむずかしい、カッコつけたレトリックを駆使してしまうが)流動体となって世界に参加することなのだと思う。そう捉えていくとこの本を読むことは新しい生き方や在り方を見出すことにもつながるのではないか。とりわけ(精神面において)若い人にこそ薦めうる啓発書だと受け取った2023/08/23
うめ
33
幼い頃には気がつかず、そして今は、分かっていながら目を背けてしまう事実。世界中の本を全て読み、理解することは人間の限られた生の中では難しい。もしも不老不死がかなうなら、膨大なセンテンスの海を悠々と泳ぎ楽しむことが出来るのかも知れないが、人の脳の容量に限りがある以上、永遠の命を得ても尚、先人達が積み上げてきた言葉と英知の前には膝をつかねばならないのかもしれない。書評を読むのは初めてだったが、鋭くも静かな語り口、深い思索に膨大な知識、ただただ圧倒された。読書が好きな人にこそ、おすすめしたい一冊だった。2017/08/06
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