ちくま学芸文庫<br> ロバート・オッペンハイマー ――愚者としての科学者

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ちくま学芸文庫
ロバート・オッペンハイマー ――愚者としての科学者

  • 著者名:藤永茂【著者】
  • 価格 ¥1,430(本体¥1,300)
  • 筑摩書房(2022/01発売)
  • ポイント 13pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480510716

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内容説明

理論物理学者のロバート・オッペンハイマーは、ロス・アラモス研究所初代所長としてマンハッタン計画を主導し、広島、長崎に災厄をもたらした原子爆弾を生み出した。その結果、「原爆の父」と呼ばれるようになるが、彼自身は名声の陰で原爆のもたらした被害、さらに強力な兵器「水爆」の誕生につながる可能性があることに罪の意識を抱き、その開発に反対の意思を表明していた。本書は、これまでに数多く書かれたオッペンハイマー伝をつぶさに再検討し、その多くに異を唱える。豊富な史料をもとに、彼の足跡を丹念に辿り、政治に翻弄され、欺かれた科学者の実像に迫る。

目次


1 オッペンハイマーを知っているか?
1 優等生
2 幼少のころ
3 アドラーの倫理文化協会
4 ピンクの の優等生
5 旅へ
6 ロスピノス
7 『クローム・イェロー』
8 リベラル・クラブ
9 ハーヴァードを三年で
2 救いと物理学
10 フランシス・ファーガスン
11 首絞め事件
12 原子と原子核
13 ゲッチンゲン
14 帰国
3 美しき日々
15 再びヨーロッパへ
16 バークレー‐パサディナ時代
17 父、母、兄、弟
4 核分裂連鎖反応
18 核分裂
19 連鎖反応
20 「アインシュタインの手紙」と「フリッシュ‐パイエルス・メモ」
21 ルコント・ホールの密室
5 ロスアラモス
22 グローヴスとオッペンハイマー
23 魔の山
24 シンマン、リトルボーイ、ファットマン
6 トリニティ、広島、長崎
25 トリニティ実験
26 広島、長崎
27 フランクとシラード
7 プルーデンスに欠けた男
28 赤い女性たち
29 プルーデントに生きるべきか
8 核国際管理の夢
30 マクマホン対メイ・ジョンソン
31 アチソン‐リリエンソール案
9 戦略爆撃反対
32 水爆反対
33 ゾーク陰謀四人組
10 オッペンハイマー聴聞会
34 オッペンハイマー、聴聞会に召喚される
11 物理学者の罪
35 「技術的に甘美」
36 物理学者は罪を知ったか?
12 晩年
37 プリンストン高等学術研究所
38 残照と死
おわりに
文庫版あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ホシ

23
豊富な史料を元に原爆開発の政争に翻弄されたオッペンハイマーの実像に迫ります。本書を読んでの彼の印象は「凡夫」。先日、親鸞本を読みました。『歎異抄』には「また害せじと思ふとも百人・千人をころすこともあるべし」とありますが、そんな人間の一例がオッペンハイマーではなかろうかと。彼は一流の物理学者であり有能なリーダーでしたが、覚者ではありませんでした。かといって極悪人でもありませんでした。2024/01/28

kuukazoo

17
映画を観て勉強不足を痛感したので本を読んで補完しようとしたら映画以上に誰が誰やらで頭がパンクした。二度読み返して少しは整理できた気がするけど。1920~30年代の量子力学の急速な進歩、原爆研究開発・使用に至る過程、さらに戦後の水爆開発の流れの中でオッペンハイマーが自らの過ちを背負い核開発反対に尽力する姿を詳述し、巷に流布するオッペンハイマー=原爆を作った悪しき科学者というステレオタイプを問い直す。保身とか巧く立ち回ることを知らずひたすら己の務めを果たそうとしたのも「愚かだったから」。その愚かさを笑えない。2024/06/13

松本ポン太

11
オッペンハイマーはブラックホールを予言する等優れた理論物理学者ながらも、マネージメント能力を買われて原爆開発のリーダーを任され「原爆の父」と呼ばれます。ナチスドイツに先を越されないための開発が、実際に投下された広島・長崎の惨状に後悔し、ソ連に対抗した水爆開発には一貫して反対。プリンストンの研究所長として物理学発展に寄与するも、水爆推進派の抵抗やマッカーシズムの社会情勢下で共産スパイの疑いで公職追放され不遇の半生を送ります。被爆国からは非難するべき相手ですが、軍拡競争に翻弄された人生に同情を禁じ得ません。2022/06/08

greeneggs

10
「原爆の父」と言われるオッペンハイマーについて同じ物理学者の著者が冷静な筆致で綴った本。「優れた物理学者をさいなむ劣等感は優れた芸術家のそれと変わらない」「若いオッペンハイマーは(略)文学の道を選んだかもしれない」戦後湯川秀樹、朝永振一郎のノーベル賞受賞に貢献したこと、などが印象に残った。日本中の空襲の指揮をしたカーチスルメイ、日本から叙勲されててびっくり。この人原爆投下を強く主張したと映画「フォッグオブウォー」でマクナマラが回顧していた。2023/07/25

maghrib

9
原爆開発を主導したオッペンハイマーの伝記。左派からは科学者の社会的責任を認識していないと非難され、右派からは戦後の水爆開発反対の姿勢を共産主義者として非難される。筆者はオッペンハイマーを純粋であるが故にPrudenceが欠如した人物の悲劇として捉えているよう。有名な"Now I am become a death, the destroyer of the world"の台詞はYoutubeでみることできる。 https://www.youtube.com/watch?v=lb13ynu3Iac2022/08/10

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