集英社新書<br> 9つの人生 現代インドの聖なるものを求めて

個数:1
紙書籍版価格
¥1,760
  • 電子書籍
  • Reader
  • ポイントキャンペーン

集英社新書
9つの人生 現代インドの聖なるものを求めて

  • ISBN:9784087212006

ファイル: /

内容説明

全編にわたって、むせかえるような聖性。
それが、猥雑で、エロスに溢れており、実に尊い。
ちまたにあふれている宗教の概説書を読むより、本書の読破をお勧めする。
――釈徹宗氏(僧侶、宗教学者)

紀行文学の名手が紡ぐ
魂の救済の物語。
鮮烈な伝統、信仰、霊性と歌の世界

◆内容◆
急速な経済発展を遂げ変化し続ける現代インド。その村々で伝統や信仰を受け継ぐ人々を取材した、紀行・歴史文学の名手による、19か国で翻訳出版されたノンフィクションの傑作。
死への断食に臨むジャイナ教尼僧。祭りの間、最下層の人間が神になる憑依芸能テイヤム。神に捧げられ娼婦となった女たちを守護する女神信仰。叙事詩を伝承する沙漠の歌い手。スーフィーの聖者廟に身を寄せる女性。かつてダライ・ラマ14世の警護をつとめ、亡命し兵士として人を殺めたことを懺悔するチベット仏教の老僧。約700年以上の伝統を汲む職人による官能的神像の世界観。女神信仰のもと、しゃれこうべを重用するタントラ行者。そして吟遊行者バウルとなった人々の遊行の半生――。
現代文明と精神文化の間に息づく、かけがえのない物語。

◆海外評◆
「文句なしにうつくしい本。高潔で誠実、そして啓蒙的で感動的。大好きな本、読めることが純粋に喜び」『食べて、祈って、恋をして』著者、エリザベス・ギルバート氏
「ジャーナリズムと文化人類学、歴史、宗教史の見事なまでの調和が、すばらしい小説作品のような描写力で文章に結実している。キプリング以来これほどインドの農村を魅力的に描き出した人はいない」インド学者、ウェンディ・ドニガー氏“Times Literary Supplement”紙

目次

まえがき
第一章 尼僧の話
第二章 カンヌールの踊り手
第三章 エッランマの娘たち
第四章 叙事詩の歌い手
第五章 赤い妖精
第六章 僧侶の話
第七章 神像の作り手
第八章 黄昏の君
第九章 盲目の吟遊行者のうた
翻訳者あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

松本直哉

27
髪を剃るのではなく抜き、一切の殺生を忌み゙、死に至る緩やかな断食の行を修するジャイナ教の尼僧の物語にのっけから打ちのめされて言葉を失う。しかし、このような肉体性の否定の対極といおうか、自らの肉体を捉えなおしてそこを出発点にするタントラの行者もいる。印パが国境をはさんで睨みあう場所でヒンズーとイスラムを習合するスーフィズム、カーストの最下層民が祭の期間限定で神に憑依されたり、男子禁制の場所に女性が招かれるなどの価値の顛倒の挿話も印象的だが、神に捧げられた巫女の名目で売春をさせられる女性の話はあまりにもつらい2023/09/07

松本直哉

24
スーフィーの修行者について書かれた章を再読。ヒンズー教と接触し相互に影響を受けつつ、正統のイスラームから踏み外して、娼館の集まる街に移り住むスーフィーの創始者は、難しい教義よりも宗教的法悦を重んじ、宿なしや文字を知らぬ者や女性を温かく迎える。「聖なる愚者」を意味するカランダル、髭を伸ばしボロを纏い放浪する行者は、ロシアの小説に出てくる巡礼者に似ていないか。規範的な宗教の枠からはみ出して、定住を厭い清貧を甘受する宗教者たちの群像を、パキスタン・アフガニスタン・ロシアにまたがって見ることができるかもしれない。2025/03/26

ばんだねいっぺい

21
今日は、たまたま、Unhcrの人と路上で会い、難民の話を少し話をしましたが、これを読むと救済のトリアージとはなどと悩む。2023/06/06

ピンガペンギン

15
William DalrympleのNINE LIVES In Search of the Sacred in Modern India(2009)の翻訳で素晴らしい本だった。ケンブリッジ大学歴史学専攻だった著者は23歳で出版した「マルコ・ポーロ クエスト」でも高い評価を得ている。44歳で出版されたこの作品では語り手(著者)の声をひそめて(的確な質問は出るが)いて、出会ったインドの各地方の様々な人々の物語を舞台の中心にすえたという(前書き)。著者の宗教的な旅路の記録ではなく、9人の登場人物の→2023/08/11

よきし

5
現代インド世界の豊穣な聖性を体現した人生を歩む9人の物語。ポスト近代と呼ばれる時代に、土着の豊かな信仰を生き方そのものとして体現しているそれぞれの壮絶ともいえる人生と、近代化、資本主義や原理主義、画一化などの波が周縁に生きることを余儀なくされた人々の世界をさらに押しつぶしていく状況が重なり、他者へのリスペクトと、その土地で地層のように積み重ねられたものとの対話の重要性を改めて痛感する。日本においても、生活の中の聖性が急速に根絶される瀬戸際にある今、私たちの社会の内なる豊かさに目を向ける必要がある。2022/04/07

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/19147248
  • ご注意事項

最近チェックした商品