内容説明
ここ30年間で韓国は大きく変わった。独裁から民主国家へ、発展途上国から先進国へと。20世紀に日本が「弟」と蔑んだ韓国は過去のものだ。他方、元慰安婦を始め歴史認識問題が顕在化、日韓の対立は熾烈さを増す。21世紀に入り、政治、経済から韓流、嫌韓まで常に意識する存在だ。本書は、1980年代末、途上国だった隣国に関心を抱き、韓国研究の第一人者となった著者が自らの体験から描く、日韓関係の変貌と軋轢の30年史である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむら
33
韓国研究の第一人者の自叙伝。1990年バブル末期に大学院進学。韓国に何の思い入れがあったわけでもなくかなり安易な理由で研究対象に選んだ結果、その後30年余りの日韓関係の変化に振り回されることに。大学教授の人生、面白かったー! 「愛憎」ってほど激しめでなく淡々と書いてるとこも好み。 著書は5歳下だけど世代的にほぼ一緒なので自分と韓国観の変遷となぞらえて読めるのも楽しい。著者の本は同じ中公新書の「韓国現代史」しか読んでないけど、歴代大統領のキャラが立ちまくりでたしか面白かった、はず。2022/02/26
サケ太
23
著者の55年の人生を追いつつ、韓国という国家の変遷、日本との関係性の変化を追っていく。 日本の平成史でさえあいまいな自分ではあるが、韓国という国家がグローバル化、成長を果たしていくなかで、日本という国の立ち位置が変化し、韓国政府がそれをどの様に扱うようになっていたか、という視点は面白い。学者から見た政府の対応を疑問視しているのも興味深かった。 様々な問題を抱えつつ、それが表面化していく過程、韓国側の論理や意図をある程度確認できる、というのはかなり大事。2022/01/28
さとうしん
18
韓国の通信環境の急激な発展ぶり、韓流ブームへの著者の困惑ぶりが印象的。著者が韓国を研究対象に選んだ事情はかなり場当たり的だが、それでこれだけ研究できるんだと感じた。タイトルに「愛憎」とあるが、好きにしろ嫌いにしろ愛憎というほどのものは感じられない。2022/01/22
かごむし
16
とある学者の自分史であるから、完全に個人の事情が書かれたものである。しかし、真摯な研究を続けてきた著者の視点から、時代の移り変わりを眺めるのは興味深いことであったし、なにより、一人の人生の中に社会の縮図が投影されており、これもまた1つの歴史の追いかけ方なのだなと思った。また、韓国の変化を見ることは、対照的に日本の変化を見ることでもあった。日本が経済大国としてもてはやされた時代はとうに過ぎ、日韓の関係も変わっていった。著者の専門性が高いので、日韓関係現代史としても十分な読み応えがあった。隠れた名著だと思う。2022/07/05
nishiyan
15
韓国研究の第一人者である神戸大学大学院教授・木村幹氏による自伝的日韓関係30年史。中公新書らしくない変わった作りの本書。著者が韓国を研究テーマに設定してからの歩みは政治学自体の研究手法の変化による軋轢がありつつ、インターネットの発達によって研究がしやすくなったものの、余計なストレスも抱えるようになったというのは興味深い。韓国にとって軍事政権から民主化を果たし、アジア通貨危機といった国難を乗り越えた激動の時代だったといえる。韓国の地位向上によって日本への考え方も変化していて…というのも頷くことばかりだった。2023/07/07