内容説明
宮崎あおい×向井理主演映画化原作。
夫の名は無辜歩(むこ・あゆむ)、妻の名は妻利愛子(つまり・あいこ)。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会からやってきた若夫婦が、田舎暮らしを始める。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。夏から始まった二人の話は、ゆっくりゆっくりとその年の冬まで進んでいき、「ある出来事」を機にムコがツマを残して東京へ向かう。それは背中の大きな鳥に纏わる出来事に導かれてのものだった。
「いつかこの小説のツマを演じてみたいです」という帯コメントを寄せいただいた宮崎あおいさん、雑誌「ダ・ヴィンチ」でのオススメの一冊として紹介していただいた向井理さんの二人が主演となる映画化も決定(2013年公開)。
(底本 2008年3月発行作品)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょこまーぶる
712
初めて読んだ作家さんです。初めはほのぼの気分で読んでいたけど、途中から考えさせられる内容でしたね。ツマとムコの距離感がいい感じの世界を作っているからこそ、大人少年から社会の窓があいている老人までもがこの夫婦の世界に入り込んでいけるんだろうな。で、ラストはほのぼのの気分に戻れた作品でした。2012/06/26
ehirano1
504
なかなか話に動きがなく、武辜さんの背中の壮大な入れ墨が気になるにもかかわらずホンワカ過ぎないか?と感じたのは前半までで、後半は一気に話が動きページを捲る手が止まらなくなりました。西さん流の“雨降って地固まる夫婦愛”は優しい雰囲気ながらも現実と向き合わざるを得ない厳しさが描かれた良い話でした。2020/10/03
れみ
503
お風呂でしか読んでなかったのでものすごく時間かかったけど、ようやく読了。前半のほのぼのした感じも良かったけど、個人的には、中盤辺りでシリアスになってく感じのところからの方が引き込まれたかも。2013/02/10
風眠
500
田舎に引っ越してきた新婚夫婦のふんわりした日常、と思って読み始めたのだけれど、この物語にはそれだけじゃない重大な何かがあった。お互いの事を何も知らないまま結婚したふたり。小説家のムコさんの背中には飛べない鳥の刺青。そしてツマには動物や植物と話ができる霊感のような力がある。穏やかに仲良く暮らしているふたりの間に、ある日お互いの過去が立ち現れて、言葉にならない闇が容赦なく吹き出していく。ラスト、ムコさんの『必要なものリスト』に「ぼくの妻」と書き加えられていて、この夫婦はここからがスタートなんだな、と思った。2013/01/16
ダリヤ
463
贈られてきてくれた大切な本。はじめて西さんのえがく物語にふれた。ツマとムコさんのふたりのはぐくむ空気や会話がなんともいとおしい。どんどん世界になじませてくれる関西弁とわらってしまう動物たちの名前と世界との会話。とじられていたものとそれぞれの場所でむきあい、やっぱりふたりはつよくつよくつながっている。大地君の「わかる?」という話し方がとてもすき。大地君のさいごの手紙なんかほんとほんといいな。解説が岡崎さんでほんと嬉しい。少しことばをかわしただけだけれど、その人がえがくことばにであえてとても感動した。2014/10/16