内容説明
圧倒的「数覚」に恵まれた瞭司の死後、熊沢はその遺書といえる研究ノートを入手するが――冲方丁、辻村深月、森見登美彦絶賛!選考委員の圧倒的評価を勝ち取った、第9回野性時代フロンティア文学賞受賞作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
458
岩井圭也は初読。この作品が彼の第1作であるらしい。実に鮮烈なデビューである。これまで誰にも書かれることがなかった小説世界がまさにこれである。数学の世界を描くことで、この小説は無限に広がる翼を持つことができた。コラッツ予想にはじまり、それはどこまでも翼を広げてゆく。物語としてそれを支えるのが、主人公の瞭司、熊沢、佐那の3人の造型であり、その関係性である。数学的真理を直覚する瞭司、苦闘する熊沢、遊泳するかのような佐那。数学の美しさに依拠しつつ、小説の新たな可能性を指向し、示唆する作品がこれである。2023/12/06
道楽モン
128
岩井圭也のデビュー作は、数学をテーマとした青春小説であった。凡庸な恋愛モノではなく「天才と凡人」「孤独と友情」を描いた、哀しく切ない話だ。映画『アマデウス』の嫉妬する展開、『ガラスの仮面』でのライバル関係という構図ではなく、本物のギフテッドに対して、語り手はもう距離を置かざるを得ない状況となるが、天才の遺した歴史を変える可能性を秘めたオリジナルな新しい数学理論を世間に紹介する役割を担うことで、二人の友情をつなぐ。実在の天才数学者・望月新一の提唱する宇宙際タイヒミュラー理論によるABC予想証明がモデルかな?2024/07/03
aoringo
87
数学に全てをかけた一人の天才の人生。寝ても覚めても数学のことだけを考えていた田舎の高校生。大学で恩師や親友に囲まれ好きなだけ学問に打ち込むようになる。孤高の天才が転落していく様は読んでいて辛かったけど、彼の魂は数学者達の中でこれからも生き続いていく。人間の弱さや許しも描かれていて、とても心に響いた作品でした。作者のデビュー作で、解説は森見登美彦先生です。おすすめ!2024/09/14
み
81
熱い話だった。夭逝した天才の情熱と孤独と彼が信じた真理。友情と嫉妬。アカデミアの世界のリアルとロマン。いや、ホントに熱い話だった。 5年かかって数学科を出た私には、『数覚』はなかったんだろうな。でも『楽しいから数学をやっているだけ』という言葉には心を打たれた。入学したときは皆そう思ってたよなぁ。2023/06/05
Karl Heintz Schneider
79
かつて天才と呼ばれた数学者・諒司の突然の死。彼が残したノートをもとに研究仲間の熊沢は彼が生涯をかけて追い求めた理論の証明に挑む。「数学が分かるとは、その数学的現象を『見る』ことである。『見る』とは或る種の感覚によって知覚することであり、私はこれを『数覚』と呼ぶ。」根っからの文系である私にはサッパリ理解できない。諒司が突然ノートに数式を書きなぐり始めた時「ガリレオか!」と叫んでしまった。天才と呼ばれる人には、どうしても追いつけない領域がある。熊沢は友の死を契機にそれに挑もうと決意する。2025/08/04




