内容説明
「近代の終焉」後、長く混迷の時代が続いている。従来の思想史や哲学史では見逃されてきた「死者」と「霊性」という問題こそ、日本の思想で重要な役割を果たしている。19世紀以来展開された神智学の系譜にさかのぼり、仏教学の第一人者が「希望の原理」を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
49
私たちにごく身近なものでありながら、直接には体験することのできない「死後の世界」。ポスト近代の思想界はそれをどのように捉え、どう説明してきたか。哲学、神智学、仏教、神道等諸々の学、宗教からの見方を解説していく。非常に広範囲な分野の学説、教理が扱われているので、全体の筋を捉えるのは難しいという印象を受ける。一方で、普段は見ることも知ることもできない死後について、このような豊かな世界が想定されていることに驚く。本書で説かれている東西融合の智慧という言葉に惹かれ、日本の伝統的思想を学び直す機会を持ちたいと思う。2022/07/05
odmy
2
生者と死者の間の倫理的関係みたいなものについて論じた本なのかなと思って読んでみた。それらしいことも書いているものの、話が散らかりすぎて何が何だかよくわからなかった。「十界互具」とか「存在としての菩薩」とか、面白そうな考え方が出てくるのに、それが十分に展開されないまま、次の章になったら議論から跡形もなく消えてしまう。著者としては、霊性とか死者をベースにした倫理によって、近代社会の行き詰まりを乗り越えようという思いがあるようだ。でも、それが結局どういう倫理なのかよくわからなかった。お墓参りすればいいってこと?2024/11/07