内容説明
2021年3月,文科省が学校の業務改善や効率化の共有のために始めたSNSプロジェクト「#教師のバトン」.だが実際に集まるのは,過重労働に苦しむ匿名教員の声ばかり.本書は厳しい学校現場の問題に加え,これまで教師が公に声を上げられなかった理由を探り,教師が発信することで変わる学校の未来像を展望する.
目次
はじめに(斉藤ひでみ)┴第1章 「魅力の向上」がもたらした大炎上(内田 良)┴第2章 なぜ教師は本音を言えなかったのか(斉藤ひでみ)┴第3章 法的障壁はそもそも存在しない?(嶋﨑 量)┴第4章 もの言わぬ教師はいかにつくられたか(福嶋尚子)┴第5章 未来へのバトン(内田 良)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
katoyann
17
官製ハッシュタグ「教師のバトン」がTwitterで炎上した背景にある問題と教師からの発信の意義について論評している。文部科学省は、子どものために頑張って働く教師をイメージしてハッシュタグで投稿を呼びかけたが、教師からは長時間労働の是正を求める声が多く上がったという。教師は中々、自らの主張を社会に公開する機会がなかったので教育現場の実態を知ってもらい、かつ教師にも表現の自由が保障されていることを確認できたという意味で、教師の発信には意義があったとする。なお、一連の発信は教員免許更新制の見直しに繋がった。2025/10/28
*
13
魅惑モデル(プラス面を強調しマイナス面に蓋をするようなリスク対応)への反感から「炎上」した、文科省のプロジェクト。確かにキラキラした発信を求める官僚と、過酷な労働環境に苦しむ現場とのギャップは浮き彫りとなった。しかし、教育者の発信の可能性を広げ、議論のきっかけにもなるなど、ポジティブな面も大きかったと知る▼自分は教職ではないけれど、学校が「無力感」を学ぶだけの場所では悲しいと思う。子どもはもちろん、大人にとっても。2022/01/30
TAK.I
10
#教師のバトン とは、文科省が、教師の魅力を伝え、教師を目指す人を増やすことを目的に始めた取組だ。しかし、理想を掲げたところで、現場は相変わらず疲弊した教師たちの嘆きで溢れている。子どものためと銘打てば何でもやるべきといったビルド&ビルドの論理が未だに根づきっぱなしの現場。おかしいことはおかしいと声を上げたところで黙殺されるのが関の山。しかし、社会の変化とSNSの普及に伴い、学校現場における問題が顕在化してきたのは一歩前進だ。教員免許更新制の廃止も実現された。更なる働き方改革が進むことを望む。 2022/01/15
西澤 隆
8
#教師のバトンの大炎上は「この待遇を改善しないと死んじゃうよ」という若手のドロドロを大量に可視化した。それだけにこの本も読むだけで生気が吸い取られる切なさ。学校はある意味「20年前の普通を滅私奉公で今もやれ」と言う昔の顧客が「親」として現れる珍しい現場。部活動をはじめブラック要素は多い。「先生を酷い目に遭わせないようにしないと先生がいなくなる」と親や地域の人に知らしめるのは大切だけれど、悲鳴としてのツイートは将来改善のための「発信」としての力は弱く「どうかみ砕いて外に伝えるのか」が必要になるなと感じました2021/12/08
hatohebi
6
苫野一徳氏の著書にもあったが、学校教育はほぼ誰もが体験している(はず)。それだけに個人の体験を拡大解釈した偏った一般論に陥りやすい。自分も高校教員で3校勤務してきたが、一つとして同じ職場はなかった。だからこそ教員自身も今の勤務校だけでなく他校の様子も知り、何が教育界全体の問題になっているのか知っておく必要がある。「#教師のバトン」というタグの付いた悲痛な全国の教員の声を読むにつけそう思った。2021/12/29
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