内容説明
人づきあいをしなくても回る社会ができあがっていった中で、不安定なつながりを維持するべく変化したコミュニケーション、それでも「人それぞれ」では片付けられない問題、引き起こされる分断と対立を見ていくとともに、「人それぞれ」のその先を模索する。
目次
はじめに
第一章 「人それぞれ」が成立する社会の条件
1 「個人化」が進んだ社会
自由にいろいろなことをできるようになった社会
個人化と「人それぞれ」
2 「一人」になる条件1:物の豊かさの獲得
集団的な社会
経済成長とモノの充実
商品・サービスと社会保障にゆだねられた生活維持
3 「一人」になる条件2:個人を重視する思想
人権思想と自由主義
個性と多様性の尊重
失われた「定番のライフコース」
個人化と「人それぞれの社会」
4 「個を尊重する社会」と「人それぞれの社会」
現代は「個を尊重する社会」なのか?
相手を否定しない技法の発達
「人それぞれ」が重宝される若者の友人関係
気を遣い合い、対立を回避しようとする社会
第二章 「人それぞれ」のなかで遠のいていく本音
1 ある会話から
2 気楽さと不安の狭間で
無理して人と付き合わなくてよい気楽さ
つながりに注ぎ込む「感情」
感情に補強された不安定なつながり
3 重宝される「人それぞれ」のコミュニケーション
「人それぞれ」と解釈することで対立を回避
「多少自分の意見をまげても、友人と争うのは避けたい」
4 遠のく「身近な人」たちと、漠然とした寂しさ
受け入れつつ突き放す「人それぞれ」
高まる孤立の不安
寂しい日本人
5 生身の人から幻想の友人へ
ケンカをしてしまうと友情が修復できない
「友情の物語」幻想
寂しさの解消
第三章 「人それぞれ」では片付けられない問題
1 「それぞれ」にはならない「人それぞれ」
ある親子の会話
友だちの進路の話
2 「多様な選択」の落とし穴
それぞれの選択を認める社会の受け皿
自由な選択はよいことなのか
「社会的ジレンマ」の発生
3 「人それぞれの社会」のもどかしさ
自分一人だけでは叶えられない望み
対話と調整を要する時代
逃れられない他者の影響
4 「人それぞれ」が広げる社会の格差
選択の結果や条件は必ずしも平等ではない
人びとの結婚願望はあまり変わっていない
生涯未婚率に見る「人それぞれ」の結末
5 不平等を見過ごす冷たい社会
孤独・孤立を問題視するのは「余計なお世話」?
華麗な業績をあげた人が執筆する孤独・孤立推奨言説
「コスパ」化する人間関係
「人それぞれの社会」の厳しさ
第四章 萎縮を生み出す「人それぞれ」
1 ハラスメントと炎上騒動
何を言えばよいかわからない
迷惑な行為は許さない
2 「他者に危害を加えない」という理念
「人それぞれ」にはならないこと
ハラスメントとダイバーシティ
3 リスク化する言葉と表現
ハラスメントの境界線
言葉のリスクの高まり
表現することの難しさ
4 リスク化に対処するふたつの方策
緩やかな撤退
結託という解放
5 「迷惑」という監視と裁き
迷惑をかけてはいけない
迷惑センサーのウチとソト
自粛警察、謝罪会見
キャンセル・カルチャーの恐怖
6 救いの声を封じ込める迷惑センサー
支援の届きにくさ
声を上げられない人たち
7 「人それぞれの社会」の集団的な体質
第五章 社会の分断と表出する負の意見
1 抑え込んできた思いのゆくえ
2 吸い寄せられる同質の意見
意見の合う人を求めて
検索される「つながり」
3 同質な集団同士が引き起こす対立
純化した集団
対立と分断の時代
4 過激化する主張
ヘイトの発生
多様性への不満の受け皿
5 「特権センサー」による糾弾
「特権」は許さない
特権センサーがはたらく仕組み
多様性への対抗軸として
6 秩序から外れた人びとにぶつけられる不満
不満の受け皿としての迷惑センサー・特権センサー
『テラスハウス』の事件
「上級国民」を監視する特権センサー
7 インターネットの機能的な問題
「一〇〇〇分の一」は低い確率ではない
アルゴリズムによる多様性の排除
8 対話なき「人それぞれの社会」
「人それぞれの社会」での萎縮
規範的圧力からうまれる大きなうねり
相手の見えない「人それぞれの社会」
第六章 「異質な他者」をとりもどす
1 身近に「異質な他者」がいない社会
「異質な他者」の不在
気の合わない人とつき合わなくてよい社会
身近な人の批判的・否定的意見の封じ込め
2 他者への想像力と共感の欠如
分断され攻撃し合う集団
他者を執拗にたたく人たち
3 対話をつうじた深い理解のススメ
分断を修復する対話
友だち関係を円滑に進める対話
対話の重要性はわかっているけれど
4 異質な他者を取り込むために:社会編1 インターネット
普及の速さに注目
インターネットと電話の普及過程
技術の影響を検証する仕組みを
5 異質な他者を取り込むために:社会編2 つながり
頑健さの保証
継続性のあるつながりにむけて
6 異質な他者を取り込むために:個人編
最適化を望む人間関係
「親ガチャ」「子ガチャ」
最適化の追求と関係からの撤退
最適化からの離脱
それでもつながりにとどまる気持ちを
おわりに
参考文献
感想・レビュー
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徒花
りょうみや
まいこ
石油監査人
金城 雅大(きんじょう まさひろ)