ちくま新書<br> 縄文vs.弥生 ――先史時代を九つの視点で比較する

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ちくま新書
縄文vs.弥生 ――先史時代を九つの視点で比較する

  • 著者名:設楽博己【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2022/01発売)
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  • ISBN:9784480074515

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内容説明

採集狩猟を中心とした縄文時代から、農耕を営み文明化や国家の形成が進む弥生時代へ。一般に日本の歴史の大きな分水嶺がここにあるとされてきた。では、この対照的な二つの時代は実際にはどのようなものだったのか。縄文と弥生の文化を専門とする第一人者が、最新の研究成果に基づき、農耕、漁撈、狩猟、通過儀礼、祖先祭祀、格差、ジェンダー、動物表現、土器という九つの視点から当時の生活を描き出す。さらに現代社会が抱える問題の起源を検証する。

目次

はじめに
「縄文vs.弥生」という視点
本書の構成
Ⅰ 経済活動の基本原理
第1章 縄文農耕と弥生農耕──レプリカ法で探る
1 縄文時代の農耕を求めて
一本の電話から
レプリカ法とは
縄文農耕論とはなにか
縄文農耕論への批判と期待
学際研究がもたらした発展段階論
穀物の証拠を求めて
教科書の記述によると
2 新たな分析による縄文農耕論の現在
14C年代測定とレプリカ調査の進展
日本列島の穀物栽培の起源
ヒエとオオムギの問題
エビデンスを求めて
教科書の書き換え
3 縄文農耕と弥生農耕の違い
縄文農耕の実態
植物資源利用の複雑化
遠賀川式と長原式の穀物利用
東日本の穀物利用
農耕文化複合としての弥生農耕
網羅型生業と選別型生業
縄文と弥生の植物利用の違い
第2章 二つの漁撈と海人集団の役割
1 攻める漁撈
燕形銛頭とはなにか
燕形銛頭の成立
燕形銛頭と縄文時代の漁撈
弥生時代の海蝕洞穴
海洋民的な漁撈集団
農耕民と漁撈民
2 待つ漁撈
農耕民的な漁撈
農耕民的漁撈の系譜
3 海人集団の役割
玄界灘の漁撈集団
海人集団の軌跡と組織力
海人集団と農耕集団の関係
従属する漁撈集団
縄文vs.弥生の漁撈
第3章 山と里の狩猟民
1 里での狩猟
狩猟民へのアプローチ
石鍬の大型化と石鏃の小型化
大きな罠と小さな罠
2 山人論と狩猟民
ミネルヴァ論争とはなにか
柳田國男とミネルヴァ論争
山人論の今日的意義
3 洞窟の狩猟民
奥山の洞窟遺跡
洞窟を基地にした狩猟民
狩猟民と農耕民
海・里・山の集団の関係
Ⅱ ライフヒストリーと社会
第4章 通過儀礼の変容──耳飾り・抜歯・イレズミ
1 耳飾りの役割
通過儀礼の研究を通じて
縄文耳飾りの研究
様々な文様と形
部族表示として
出自表示とステイタスシンボルとして
通過儀礼として
弥生時代の耳飾り
2 抜歯研究の変転
抜歯の意義
出自批判と双分組織
ストロンチウム同位体の分析から
14C年代測定の結果
東海系抜歯の終わり
弥生時代抜歯の二つの系譜
文化の複合的性格
3 イレズミの歴史
難しいイレズミの証明
記紀と埴輪の黥面の共通性
さかのぼる黥面表現
通過儀礼の意義と土偶大人仮説
戦争とイレズミ
通過儀礼と社会統制の強化
第5章 祖先祭祀の三つの形──縄文と弥生の死生観
1 祖先祭祀を探るには
位牌分けの習慣
文化人類学からみた祖先祭祀
祖先祭祀発生のメカニズム
祖先祭祀の普遍性
2 縄文文化の祖先祭祀
祖先祭祀の萌芽
墓地をどこに設けるか
集落を分割する意味
再葬と複葬
権現原貝塚と双分制社会
気候変動と再葬
再葬墓の役割
3 東日本弥生文化の祖先祭祀
イースター島の石棺墓
人骨の加工と変形
再葬のプロセスとシステム
弥生再葬墓の成立と系譜
最古の弥生再葬墓
祖先祭祀と通過儀礼
4 大陸由来の祖先祭祀とその影響
吉野ヶ里遺跡の墓地の構造
中国由来の祖先祭祀
漢代の祖先祭祀の影響
近畿地方の大型建物
居住域での祖先祭祀
祖先祭祀の三つの形
第6章 不平等と政治の起源
1 複雑採集狩猟民の社会
本章のあらまし
世界のなかの縄文文化
生活技術の高度化
縄文社会の仕組み
複雑採集狩猟民とはなにか
縄文文化の東西差
2 トランスエガリタリアン社会と縄文社会
縄文時代の階層差
トランスエガリタリアン社会とは
性別による偏り
有力な家系
呪術者か族長か
装身具の差異が示すもの
ヒエラルキーとヘテラルキー
3 弥生時代の不平等と政治
前方後円墳の特質
弥生時代の墓の変遷
弥生時代の不平等の由来
男性と戦争
同心円状の階層構造
世襲をめぐって
部族社会から首長制社会へ
Ⅲ 文化の根源・こころの問題
第7章 土偶が映す先史のジェンダー──男女別分業と共同参画の起源
1 縄文時代の男女──採集狩猟民の性分担
本章のあらまし
藤森栄一と座産土偶
お産姿の持続力
土偶と石棒にみる男女二元的世界観
クイア考古学
縄文社会の男女
男女二元的世界観の由来と生業
2 弥生時代の男女──農耕民の性分担と協業
西日本の男女像
東日本の男女像
農耕文化が土偶を変えた
銅鐸絵画は語る
男女のパワーバランス
分銅形土製品とはなにか
3 三つの論点──持続する縄文文化の伝統とその革新
縄文社会のジェンダー
大陸文化の影響力
持続する伝統
第8章 立体と平面──動物表現にみる世界観
1 縄文人の立体画
思想への接近
立体画と平面画
再生とアニミズム的信仰
イノシシの造形が意味するもの
狩猟儀礼としての動物表現
2 弥生人の平面画
イノシシからシカへ
地霊としてのシカ
イノシシはどうなったか
鳥形木製品と鳥装の人物絵画
弥生絵画と農事暦
3 大地から空と空想の世界へ
もう一つの立体画
弥生時代の猿蟹合戦
龍の意匠の意味
動物儀礼と複雑採集狩猟民
立体画から平面画へ
天的宗儀と神話のあけぼの
第9章 縄文土器と弥生土器
1 縄文土器の文様と形
土器の文様と形
縄文の出現と展開
縄文のない縄文土器
用途に応じた器種のバリエーション
亀ヶ岡式土器と突帯文土器
波状口縁の出現と展開
2 弥生土器の文様と形
赤く塗った土器
近畿地方の弥生土器文様
縄文の伝統と多様性の意味
弥生土器の形と象徴性
3 弥生土器の成立をめぐって
一片の土器から
壺形土器の成立をめぐって
再度、一片の土器から
弥生文化における縄文文化の役割
4 壺形土器と穀物栽培
壺形土器増加の第一の画期
第一の画期と第二の画期の意義
雑穀と壺形土器
中部高地地方の土器と農耕
東北地方北部の土器と農耕
穀物栽培と農耕文化複合
終章 弥生のなかの縄文
縄文系弥生文化再考
システムとしての農耕文化複合
遠賀川文化の農耕システム
条痕文系文化の農耕システム
複雑採集狩猟民社会の規範
砂沢文化形成の背景と評価
二元論批判に対して
時代区分論からみた縄文・弥生
民衆史の視点
革新と保守
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬参仟縁

58
文化体系のサブシステムとしての文化要素の多くが農耕に収斂しているかが弥生農耕と縄文農耕との違い(044頁)。信州人として把握。中川村苅谷原遺跡は伊那谷段丘上にある弥生前期の遺跡(073頁)。時間とお金に余裕があれば、一度行ってみたい。他、高山村湯倉洞窟は、破風岳の足元に開口した洞窟という(079頁)。木島平村根塚遺跡から出土の鉄拳は、伽耶地方からもたらされたか、影響を受けたようだ(082頁~)。縄文耳飾りで、長野市宮﨑遺跡石棺墓から出土の人骨耳から直径5㎝、重さ80g滑車形土製品(089頁)。大きい。2022/04/16

みこ

31
縄文VS弥生であって縄文人VS弥生人ではない。かつて学校で学んだ歴史では稲作が伝来したから縄文時代から弥生時代になりましたという感じで教わったが、スマホが発明されたからといって、一斉にガラケー人がスマホ人になったわけだはないように、その縄文から弥生への過渡期に焦点を当てた一冊とも言える。2022/03/21

月をみるもの

21
「顔の考古学: 異形の精神史」( https://bookmeter.com/books/16986436 ) がとてもよかったんで、この本も即買い。農耕形態、抜歯・刺青などの通過儀礼、ジェンダー論といった個々の研究トピックはどれもこれも最新のワクワクする成果にあふれてる。それだけに最終章の総論が、まとまりに欠けてるように見えてしまうのが玉に瑕か。。。 2022/02/13

活字スキー

19
こんなタイトルだけど別に縄文人と弥生人が対決したりはしません。これから本格的に学ぼうとか、既にある程度学んでいる人にとってかなり参考になりそうな情報てんこ盛りのかなりガチめな学術書で、素人の自分は正直半分以上流し読みになってしまった。縄文時代は1万年以上、弥生時代だって江戸時代より余裕で長かったのだから、その実態を全て解き明かすのは恐ろしく困難だろう。そしてそれを面白いと思える人にとってはまさに底なしの「沼」なのだろうな。2022/09/01

19
VS.とはついてるものの、縄文から弥生への過渡期への記載が多かった。そりゃ「はい、今日から弥生です」ってふうに変わるわけないよなあ。ジェンダーについて土偶は女性(特に妊婦)を現すものが多く、それの対比として石棒があるが「手のひらサイズだった石棒が中期になると大型化して、大人の背丈より大きいものもあらわれて全く別物になったようである」っていうのは、それは単に別物なのではと思ったりした。そんな棒ならなんでも性器ってそれなんてフロイト…。2022/05/07

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