ちくま新書<br> ふしぎな日本人 ――外国人に理解されないのはなぜか

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ちくま新書
ふしぎな日本人 ――外国人に理解されないのはなぜか

  • ISBN:9784480074577

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内容説明

自分の意見を強く主張しない日本人の引っ込み思案な性格は、外国人には理解しがたい。ヨーロッパでビジネスを長年展開してきた塚谷氏は、その理由の説明をヨーロッパで繰り返し求められるうちに、ヨーロッパの麦作農家を訪れて驚いた。土も水路も、何もかもが日本と違う。日本の集団主義は、世界にも稀な高度労働集約で行われる稲作にこそ起源があると気づいたのだ。半世紀近く日本に暮らし日本人を知り尽くすバラカン氏と、日本文化の面白さや特殊性を縦横無尽に語り合う。

目次

はじめに ピーター・バラカン
第一章 日本人ビジネスマンが感じたヨーロッパ社会
1 「ノー」と言えない日本人
仕事と観光では見方が変わってくる
最初の仕事は分厚い契約書を読むことだった
日欧の仕事のやり方の違いに驚く
答えが「ノー」でも交渉は終わらない
2 異なる「正義」
海外での自由を経験したら日本では暮らせない
お茶くみを命じられた女性はすぐに会社を辞めた
おもてなしは理解できない、サービスは有料と考えるヨーロッパ人
裁判で白黒つけたがる日本人
「和」の大切さを学校で教える日本
日本には推定無罪はないのと同じ
日本の常識は世界の常識とかけ離れている
3 民主主義の違い
欧州の民主主義は左右の振れ幅が大きい
国益に適うかどうかで判断するオランダ
日本の民主主義は振れ幅がほぼない
細かいことにこだわるから良いものができる
第二章 バラカンが戸惑った日本と日本人
1 「あと一〇日で日本に来い」
日本行きのきっかけは夕刊紙の求人広告
日本語学科を選んだのは語学に興味があったから
敬語で理解した日本のタテ社会
会社員のときは定時で帰っていた
2 人の発音を直すイギリス人
英語の表記にカタカナを使わないほうがよい
カタカナ英語は通用しない
「日本語ではこうなっていますから」にビックリ
政府はケチで文化にお金を出さない
日本語は英語に訳せない言葉が多い
3 「お疲れさま」としか言わない日本人
電線が町の景観を悪くしている
日本には強い同調圧力があった
広い家なら日本家屋に住んでみたい
来日一週間で初めて地震を体験する
意見を言ってくれないので不満が残る
4 日本の音楽を海外に紹介する
音楽の輸入は簡単だが輸出は大変
海外のミュージシャンは耳コピーで演奏する
海外の人が聞きたいのは日本独自の音楽
第三章 日本とヨーロッパに横たわる誤解
1 「日本人は土地管理ができない民族なのか」
日本人の行動は不思議がられていた
テレビが日本を面白おかしく取り上げる
大きな嵐でも犠牲者が出なかった
2 日本人の集団主義は稲作がつくった
ヨーロッパの畑には水路がなかった
部下から聞かれた質問にはすべて答えていた
稲作と日本人のアイデンティティに目を向ける
水の管理がいらないアジアの浮稲農法
日本の川は滝のような勾配
日本人に関する本を読みあさる
連帯責任はあり得ない
ヨーロッパで知った日本社会の歪み
3 ヨーロッパに対する日本人の誤解
ヨーロッパは狩猟民族の国ではなかった
ヨーロッパ人に言われる「日本人はアンクリア」という言葉
一度言っただけでは理解してもらえない
EU統合とその後のイギリスの離脱
第四章 日本人はなぜコメを主食に選んだのか
1 稲作の起源
稲作が始まったのはおよそ三〇〇〇年前
コメを食べるようになって人口も増えた
コメは連作障害がなかった
2 日本における稲作の苦難
江戸時代に関東では土壌改良を行った
稲作のやり方は弥生時代とほとんど同じ
水温を高めてから田んぼに水を引く
日本地図を見て部下がビックリ
ジャポニカ種は脆弱で手間がかかる稲種だった
通貨はあったがコメはお金として流通していた
第五章 日本人のアイデンティティを形成した稲作文化
1 村八分の論理
日本の稲作は今でも集団でなければできない
「一人でも反対したら橋はつくらない」
経済効率を考えるヨーロッパ、考えない日本
武士のメンタリティーが広まったのは明治以降
神道の結婚スタイルはキリスト教が下敷き
ルールを破ると科される罰「村八分」とは
2 みんなと一緒が大切
今でもみんなと同じが好きな国民
北欧は単なる寒冷地ではなく豊かな土地だった
共通認識がないと「言わなくてはわからない」
言わなくてもわかるは集団主義の特徴
村は造幣局、お金生産組織
今の雇用形態は日本人に合っていない
3 なぜ自己主張をしないのか
「つまらないものですが」は謙虚である証
言い訳を許さないのが稲作組織
会議の多さは共同意識の植え付け
海外の競争相手には日本のスピード感も、常識も一切通用しない
交渉ごとでは「ノー」で引き下がらない
第六章 グローバル化の中で日本人はどこへ行くのか
1 窮屈な日本社会
日本には社会的な重しがあった
モチベーションがあれば人は変われる
外国では日本人とは何かを必ず聞かれる
集団稲作に全体主義的な傾向がある
民主主義、個人主義、エゴイズムがうまく区別できないのが日本人
2 自分たちの社会を知る
日本人は恵まれた食文化を持っている
都市はお金がないとエンジョイできない
日本を変えられるのは帰国子女
日本がどうあってほしいのかというヴィジョンがなければいけない
「なんで日本はこうなのか」を説明する必要がある
そんな現実があるのに、それでも日本人の目が覚めない
おわりに 塚谷泰生

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

jinya tate

8
図書館電子書籍。日本の米作りは特殊だ。個人や家族を単位とする農業を日本は集団的に行う。本来、熱帯・亜熱帯で三期作できる米を、高緯度の日本で年に一度だけ栽培する。集約的な作業なので個人の勝手は許されない。江戸時代から培われてきたその気質は、外国人には理解し難い。2023/01/13

たろーたん

4
最も驚いたのは「答えがノーであっても交渉が終わらない」。日本の感覚だと「ノー」と言われたら契約交渉は終わりと思うのだが、ヨーロッパだと「ならもうちょっと条件を緩めよう」や「どういった条件ならイエスになるのか」などと交渉が続き、「ハイ、おしまい」にならないらしい。この感覚は私にはないな。あと、警察や裁判が身近で最後の手段とならず、不満があると割と簡単に訴えるらしい。あと、笑ったのが「日本の社会には空気というものが存在していて、それによって物事が決まるんだ」「デンマークにだって空気はあるよ」。2023/03/10

風鈴

3
日本人について色々語り合う本。海外に赴任した日本人と日本にきたイギリス人が語り合うので、面白いですね。海外ミステリを読んでる時の愉しさを思い出しました。そういえば、矢吹駆シリーズもフランスが舞台だし、ちょうど良かったのかも。キリスト教の東西に別れた話なんかも知りたくなりますね。東方正教会とかカトリック、プロテスタント等々…2022/12/04

金北山の麓に生まれ育って

2
【日本人論だと思って読んじゃいけません】ピーターバラカンというマージナルマンで強烈なスパイスを振りかけた変形の日本人ビジネスマン成功談なんです、海外での起業で外人とのコミニケションの苦労と成功談が生々しく面白いんです。稲作が日本人の思考方法と社会的な無意識を決定した、というよくある説を農学部卒の視点でジャポニカ種と他で比較文化論に展開してるだけだとか、武士道とは農民道の変形だなんて変形したただの二番煎じだとか言っても意味がないのです、そこそこ的を得てるなぁぐらいで十分。要するに海外ビジネス本の一種ですよ~2022/04/30

ご〜ちゃん

1
大学時代は、自分とそれほど変わらない同級生が就職し、違う職業に就いたら、考え方や行動様式が変わっていた経験を踏まえると、日本人の特徴が手間かけてコメを作っていて、集団で行わざるを得ないところから、来ているという考え方も一理あると思った。2022/07/08

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