ちくま新書<br> 憲法政治 ――「護憲か改憲か」を超えて

個数:1
紙書籍版価格
¥1,034
  • 電子書籍
  • Reader
  • ポイントキャンペーン

ちくま新書
憲法政治 ――「護憲か改憲か」を超えて

  • 著者名:清水真人【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2022/01発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 240pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074478

ファイル: /

内容説明

憲法と政治には、一筋縄ではいかない相互作用のダイナミズムが働いている。憲法は民主政治のプロセスを形づくる法であると同時に、そのプロセスを通じて、憲法自体が改正されることもありうるからだ。本書では、こうしたダイナミズムを「憲法政治」と定義し、国会の信任で内閣が成り立つ「議院内閣制」の統治構造に切り込んで、憲法改正の難しさの深層を考察する。緻密な取材を重ね、「憲法改正」をめぐる現実政治の潮流と統治構造の改革論を重層的に描くドキュメント。

目次

序 「憲法を巡る政治」の一〇年
「三分の二の政治」の難しさ
安倍流改憲の失敗の本質
「平成デモクラシー」の権力再編
「改革の不足」と令和の改憲論
第一章 改憲が自己目的化する力学 2012~2013
1 「裏口入学」九六条改正論
再登板した安倍の「奇手」
憲法審査会と「中山ルール」
橋下維新と自民改憲草案
脱・押しつけへ「何でもいい」
改憲が遠い特異な構造
公明が待った、世論も逆風
安倍と憲法学の断絶
参院選後の微妙な勢力図
2 内閣法制局も「首相支配」
憲法解釈に人事で風穴
民主党と安倍の通奏低音
遅々とした「積極司法」
九条と個別的・集団的自衛権
「武力行使と一体化」の論理
憲法学の影薄い官邸会議
第二章 集団的自衛権と憲法九条 2013~2015
1 「解釈改憲」への隘路
安保法制懇と「芦田修正」論
安倍の本音「限定容認」
高村の武器「砂川判決」
波紋広げた会見のパネル
元法制局長官らの批判
公明が甦らせた「幸福追求権」
シーレーン機雷掃海に穴
閣議決定で「在庫一掃」
2 「長谷部ショック」と分断国会
与野党論戦は二日だけ
内閣と国会に協働なし
憲法学者三人が「違憲」
「立憲主義の地霊」現る
失われる「共通の土俵」
安保成り、改憲は遠のく
第三章 象徴天皇と「アベ政治」 2015~2016
1 衆参両院で「改憲勢力」
臨時国会の召集要求無視
自民改憲草案「二〇日以内」
「緊急事態条項」浮き沈み
議員任期など「お試し改憲」論
元最高裁判事の「覚え書き」
「機能する憲法」長谷部理論
参院選後の未体験ゾーン
至難の改憲マネジメント
国民投票と選挙の分離論
2 「天皇退位」で半年空白
陛下「おことば」の衝撃
「能動的な象徴天皇」の論理
世論高支持が決定打
「先例となる特例法」浮上
自民改憲草案を棚上げ
第四章 首相が改憲を提案するとき 2016~2017
1 憲法学から「第三の論陣」
「放談会」と化す憲法審
退位立法へ「衆参合同」
共産が合意へ流れ加速
表の国会審議は形だけ
ヤフーが「民間版憲法審」
護憲・改憲超える新潮流
重み増す個人情報保護法制
2 「二〇二〇年」へのカレンダー
九条残して自衛隊明記案
公明取り込み、野党分断
野党に「逆・長谷部ショック」
内閣の改憲「発案」の是非
「国会専権」も中山裁断
「改憲より解散」へ潮目変化
第五章 「自衛隊明記」へ自民攻防 2017~2018
1 安倍と枝野、因縁の対決
臨時国会で冒頭解散
安倍流権力の「過剰適応」
一九年発議へ仕切り直し
国民投票法の遺恨
「感情」勝った英EU離脱
2 消えた「必要最小限度」
「自衛隊」を書けない理由
浮上する「自衛権」明記案
一〇〇を超す九条改正案
石破抑え「本部長一任」
大災害時の緊急事態条項案
党議決定を控えた理由
第六章 「中山ルール」の重みと限界 2018~2019
1 憲法審査会の「開かずの扉」
公明から国民投票法改正案
「手を切り落とされても」
「職権開会」巡り緊迫
総裁三選で「ギアチェンジ」
「職場放棄」発言で紛糾
2 「改憲勢力」一ミリも進めず
参院選で「三分の二」割れ
憲法審査会長に「国対族」
発言封殺に石破憤激
参院に「独立財政機関」構想
「強い首相」に「強い国会」
第七章 コロナとデジタル「新しい中世」 2020~2021
1 感染症対策と統治システム
緊急事態条項の論争再燃
「新型インフル特措法」とは何か
脇に置かれた「法の支配」
責任問われる「独裁官」
くすぶるロックダウン法制
「オンライン国会」動き鈍く
二〇年改憲絶望で安倍「残念」
2 「ゆるふわ立憲主義」の国
菅が学術会議で任命拒否
立憲と国民の野党内対立
国民が「情報自己決定権」
物足りぬ「デジタル憲法」
変容する「個人と国家」
コロナ特措法に罰則導入
国・地方の調整混乱
行政「白紙委任」に違憲説
「硬質な立憲主義」は可能か
国民投票法改正案が成立
終章 憲法改正論議の三原則
岸田首相「国民の理解を」
公明が「デジタル憲法」公約
内閣の「改憲発案権」再考
「政治主導」に専門家の支え
政党間競争とは切り離し
「憲法改正会議」になれるか
「平成デモクラシー」の検証から
議院内閣制とは何か
あとがき
引用・参考文献
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

わび

5
経済財政諮問会議の分析を契機に統治改革論へウイングを広げていった著者の関心が「憲法を巡る政治」に行き着いたのは必然というか何と言うべきか。本書は、必要な議席を擁し、スローガンに掲げ続けた安倍政権がなぜ改憲にこぎ着けなかったのかを重厚に描き出す。大きなポイントは、憲法を巡る審議について国会主導かつ与野党の合意を重んじる慣例があること。選挙の多い政治カレンダーも加わり、首相主導の政治風景と噛み合っていないことが指摘される。終章で提言される国会の機能強化も著者の「平成デモクラシー」整理からすれば説得的である。2022/02/21

Go Extreme

1
「憲法を巡る政治」の一〇年 改憲が自己目的化する力学 2012〜2013: 内閣法制局も「首相支配」 集団的自衛権と憲法九条 2013〜2015: 「解釈改憲」への陰路 「長谷部ショック」と分断国会必 象徴天皇と「アベ政治」 2015〜2016: 「天皇退位」で半年空白 首相が改憲を提案するとき 2016〜2017 「自衛隊明記」へ自民攻防 2017〜2018 「中山ルール」の重みと限界 2018〜2019 コロナとデジタル「新しい中世」 2020〜2021 感染症対策と統治システム ゆるふわ立憲主義の国2022/01/23

n_2_d_6_m_0_p_1

0
憲法審査会もここまで人間関係で成り立ってるとは驚いた。改憲が「究極の議員立法」だとすれば、自民党の改憲案が内容以前に何言ってるのかわからなかったのも納得。枝野の安倍に対する態度に私怨を感じていたのだが、それが気のせいでなく、ちゃんと理由があったのだと知れたのも本書の収穫。あとがきから読み始めた方が著者の意図は分かりやすい。2022/04/15

Ra

0
「平成デモクラシー」を理論的基盤に,憲法をめぐる政局(「憲法政治」)の10年を,憲法学者の言動を交えながら論述。「中山ルール」に代表される憲法政治の独特の間合いは変容。令和改元は憲法政治の停滞を招いたことは読んでいたが,そこにおける両院議長差配の全会派手続きが憲法政治のネクストステップに活かし得たという証言は興味深い。2022/02/05

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/19102365
  • ご注意事項