内容説明
なぜ精神病院を廃絶したのか?精神病院から地域への移行で何が生じたか。地域精神保健サービスの現場でいま何が行なわれているのか。イタリア精神医療の歴史と現状を展望し、「人間」を中心にすえた、地域での集合的な生のかたちを描く。
目次
はじめに:「ものがある」という経験
序章 精神医療をめぐる「生」の人類学
第I部 イタリア精神医療の歴史と思想
第1章 イタリアにおける精神医療の展開
第2章 フランコ・バザーリアの思想とその実践
第II部 イタリア精神保健のフィールドワーク
第3章 病院から出て地域で働く
第4章 主体性を返還する
第5章 一人で一緒に生きる
第6章 〈演劇実験室〉と中動態
第7章 歓待の場としての「わたし」と「地域」
終章 生きているものたちのための場所
注
参考文献
索 引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いとう・しんご
8
松井梓さんきっかけ。「精神医療の改革は様々な国で起こったが、その批判を精神病院の廃絶というかたちで国の法律のレベルにまでもたらしたのはイタリアだけである。」P389。精神障害者の地域移行に真剣に取り組んで精神病院を全廃したイタリアと、その美名に隠れてひたすら病床削減を図った日本の違いはどこにあるのか、厚労省に対する憤りと、手弁当で不動産屋さん回りをしたり、お弁当屋さんを始めた看護師さん達の努力のことを思い出しながら読みました。結局、「人」を「人」としてみるかどうかの違い、なのだと思います。2025/05/28
ポカホンタス
7
興味深い内容。詳しい歴史の紹介などがあり非常に勉強になった。バザーリアという人のことも初めて知ることばかり。たくさん本や論文を書いているのに、なぜか日本語訳が1冊もないのが知られていない原因なのかもしれない。たくさんのイタリア語の文献を紹介してくれていることも大きな功績。<演劇実験室>の話も面白かった。ただ、これがルポルタージュではなく人類学なのだとしたら、ここまで対象を美化してしまっていいのか、という疑問が残った。2015/07/26
工藤リリカ
5
この本の内容を一言で表現するのは難しいです。ただ、言えるのは今の私にとって必要な本だということ。イタリアの精神医療についての本だけれど、この世の中の息苦しさ、生きづらさに関心のある人すべてに本書は役に立つと思います。私たちがともに生きることの本質に迫る、重厚な内容です。2015/02/15
はる
2
かつてのイタリアの精神病院が強制収容所のような施設/制度であったことを知って驚いた。そこからバザーリアが施設の外でオルタナティブな提案をするのではなく、中から精神病院を廃絶し地域精神保健サービスをつくっていったのもすごいなと。玉野井先生の生命系の経済、それを実現する場としての地域ともすごく重なる話だと思った。不便を楽しむイタリア人と同じような感覚が私にもある気がする。2024/02/21
け
1
話者の性別による訳し分けや、聖母・母親の美化、グルーミングという言葉の注釈なき使用などに意識の差を感じはしたが全体としては良かった。集合的な主体性、を触発するための〈地域〉。2023/12/28
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