内容説明
迫りくる中国の影に台湾はどう向き合っているのか?
中国の大国化とその興隆はアジアのみならず世界に対して多大なインパクトを与えている。
なかでも台湾は、中国が「台湾統一」を国家目標に掲げているという特異な事情もあり、中国による経済活動や文化社会交流を通じた政治的取り込みの影響をきわめて強く受けている。
本書では、台湾の日常生活のいたるところに現れていながら、その実態が捉えがたい中国の影響力を「チャイナ・ファクター」として析出、社会科学の視点で事態を初めて理解する試みである。
大国が軍事力などによらず影響力を行使するありかたは従来、ソフト・パワーと言われてきた。しかし、中国による「統一戦線工作」を通じた影響力行使はよりいっそう苛酷である。
本書においては、中国人観光客の台湾来訪、中国企業による投資、マスメディア、教科書、民間宗教といったさまざまな領域での中国の影響力について事例研究を行い、その構図を解明していく。
他方、一連の過程には台湾側からの強い抵抗と反作用があることも分かっている。
われわれは迫りくる中国の影に果たしていかに立ち向かうのか。日本でも必読の書!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Go Extreme
1
台湾における中国ファクター:影響力作用の2つのパターン 中国人観光客のポリティカルエコノミー:中国人観光ビジネス 政治的効果とバックラッシュ 台湾で一つの中国を演じる 宗教を通じた統一戦線工作:民間宗教 信仰コミュニティ 海を超えた巡礼の歴史的背景 進撃の紅い資本:台湾投投資ネットワーク 引きより押しが強い中台政府の関係 中国ファクターと台湾の教科書論争:エスノポリティクス 2つの歴史観 報道の自由における米国ファクターと中国ファクター:対米依存 精緻な分析を通じた渾身の台湾回収工作の暴露2021/07/24
rineoskiss
0
中国による台湾への影響力行使についての論文集。中国のシャープパワーについて扱った本の走りとも位置付けれるらしい。市場自由化(政府からの影響力低減)を利用したメディアの代理人化や、中国人観光客を受け入れる国民党系経済圏の成立等、他国の事例でも共通点がありそうな話がたくさん。議論するにしても、観光やメディア等各国の構造を理解する必要があるなと感じた。2023/01/04
wasserbaron
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台湾社会における中国の統一工作の影響、すなわち中国ファクターと、それに対する台湾社会の反作用をテーマごとに考察した小論文集。中国ファクターが政治のみならず経済、宗教、教育に及んでいることを再認識できる。ただ台湾社会も一方的な受け身ではなく、2014年のひまわり学運以降、かなり反作用が強まっている。解説で述べられているよう、本書自体が中国ファクターへの強力な反作用の成果である。中国の姑息かつ周到なやり口を理解できる学術的暴露本と言えよう。2021/11/06