内容説明
「平家物語史観」を乗りこえ 内乱が生んだ異形の権力 鎌倉幕府の成立にせまる
屍を乗り越え進む坂東武者と文弱の平家公達――。我々がイメージする源平の角逐は、どこまで真実だったのか? 「平家物語史観」に基づく通説に対し、テクストの精緻な読みと実証的な探究によって、鋭く修正をせまる。さらに、源平合戦の実像や中世民衆の動向、内乱の歴史的所産としての鎌倉幕府の成立過程までを鮮やかに解明した、中世史研究の名品。
現在でも、武士を暴力団にたとえ、その武力を超歴史的に批判するような見解は目についても、肝心の武士が「戦士」として行動する「戦争」や「武力」の在りかたについては、まだまだ未解明な部分が多い。……「源平合戦」にロマンを感じておられた方は、少々失望されることになるかもしれないが、本書としてはできるだけ現実的・冷静に、治承・寿永内乱期の戦争の実態を復元し、そのうえで、たんに戦乱の被害者にとどまらない中世民衆の動向や、内乱の歴史的所産としての鎌倉幕府の成立を、検討していきたいと考えている。――<本書「はじめに」より>
目次
第1章 武士再考
第2章 「弓馬の道」の実相
第3章 源平の「総力戦」
第4章 飢饉のなかの兵粮調達
第5章 鎌倉幕府権力の形成
第6章 奥州合戦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
48
治承・寿永の内乱を源平合戦として見ることは誤りであるとする本。アニメの「平家物語」や「鎌倉殿の13人」などでこの時代のことに接することが増えたので読んでみた。教科書では1185年の守護・地頭の設置をもって鎌倉幕府成立としているが、地頭は敵方所領を没収したところに設置しているが、こうした制度は以前から存在したという指摘は興味深かった。また、かつて鎌倉幕府の成立を征夷大将軍任命を根拠にしていたが、頼朝自身は鎮守府将軍に対抗できる称号であれば、必ずしも征夷大将軍にこだわっていなかったというのも意外な感じがした。2022/03/11
翔亀
40
【中世23】書名は誤解を与えるかもしれない。源平合戦そのものというより、この時代のいわば社会史の諸論点の論文集だ。現代の常識をこの時代へ投影してしまうことの思わぬ誤解を正してくれて、意外に面白かった。例えば、合戦における馬とか城郭。よく平家物語史観(平氏没落の必然とか)への反省などと大上段に構えるのがこの時代を扱った最近の歴史書に多い(本書も少なからずそうだが)中で、ディティールに拘ることの重要性がよくわかるのだ。合戦における馬とか城郭とかいうと、マニアックに聞こえるが、当時の武士が騎乗していた馬の↓2022/04/18
ホークス
38
鎌倉開府までの武士の成り立ちに迫る。武士の起源は「在地領主が防衛の為に武装」という定説と違い、弓馬に強い大陸や蝦夷に備えて集めた狩猟民にある。彼ら古い武士層は少数で、源平争乱時に武装能力のある広範な層が加わる。当時の小柄な馬の扱いにくさ、武具が高価な事、ローカルな情実が優先した事、源頼朝の立場は不安定だった事、奥州征伐の高度な政治性など。様々な検証から武士の実像が見えてくる。世界共通とはいえ、戦時の兵糧が掠奪で賄われた様子も分かる。ちょっとマニアックだが、余計な精神論や忖度が無く充実した読後感。2019/05/06
とろとろ
23
源平合戦の時代、通常は平家物語の視点から語られることが多いが、実際はどのような社会体制だったのか、武士の役割やその戦いの方法から当時の社会を見ようとするものだ。平安時代末期から鎌倉時代にかけて、幕府として武士が権力を確立するまでの過程と、その権力の根源となる武士団の成立が戦争という過程を通して丁寧に解説されている良い本だと思ったよ。2015/11/17
高橋 橘苑
19
ポイントの一つは、旧来の「石母田領主制論」では中世社会を切り開く英雄=変革主体として美化されてきた武士を、「職業的戦士身分」として捉える見方が有力であるという見解である。そして、もっとも大きな論点が、第6章「奥州合戦」にあることは、解説の兵藤氏の言をまたないだろう。頼朝が「前九年の役」の頼義の故実をひたすら踏襲し、源氏将軍の「神話」を創造したという指摘である。神話を拠り所に、頼朝の政治力に支えられた鎌倉幕府が、平時に於いても軍事力を恒常化させ、動乱の末、平安貴族から、権威と権力の分離を成功させた事である。2016/05/04
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