〈妊婦〉アート論 - 孕む身体を奪取する

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〈妊婦〉アート論 - 孕む身体を奪取する

  • 著者名:山崎明子/藤木直実
  • 価格 ¥2,640(本体¥2,400)
  • 青弓社(2022/01発売)
  • ポイント 24pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784787274106

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内容説明

菅実花の作品『ラブドールは胎児の夢を見るか?』は、妊娠した女性型愛玩人形を写真に収めるアート・プロジェクトで、見る者の「常識」と「感性」を揺るがし、大きな話題になった。

菅の作品の問題提起を受け、孕む身体と接続したアート――マタニティ・フォト、妊娠小説、妊娠するファッションドール、胎盤人形、日本美術や西洋美術で描かれた妊婦――から、女性の身体経験が社会にどう意味づけられ、人々はそこに何を読み込むのかを照らし出す。

様々な表象で分断される妊娠という女性の経験を社会的な規範から解き放つ挑発的な試み。

目次

序 章 妊婦表象は何を語るのか 山崎明子
 1 ユートピア的想像力が生み出す女性像
 2 表象は不在を補う
 3 ディストピアとしての妊娠

第1章 未来の母としての「妊娠するアンドロイド」をめぐって 菅 実花
 1 アンドロイドと性
 2 比喩としてのアンドロイド
 3 サイボーグとしての人間
 4 妊娠しないアンドロイド
 5 ラブドールは胎児の夢を見る
 6 フランケンシュタイン・コンプレックス
 7 怪物の花嫁と未来の母

第2章 マタニティ・フォトをめぐる四半世紀――メディアのなかの妊婦像 小林美香 
 1 記念写真としての「マタニティ・フォト」の成り立ち
 2 マタニティ・フォトの様式と儀式化
 3 SNSで共有される妊活・妊娠体験――自撮り世代の妊婦像
 4 「グラマラス(魅力的)な妊婦」――母であり、女であり、プロフェッショナルであること
 5 記号的表現としてのマタニティ・フォト――その受容と変奏

第3章 「妊娠」を奪取する――女性作家による「妊娠」表象を読む 藤木直実
 1 二十世紀初頭の文学場とジェンダー
 2 「妊娠」と愛国――与謝野晶子「産褥の記」
 3 悪女の「妊娠」――内田春菊「ファザーファッカー」
 4 「妊娠」を奪取する――村田沙耶香「殺人出産」

第4章 「あるべき」女児用人形とは何か――「妊娠」した女児用人形をめぐって 吉良智子
 1 近代化(ジェンダー化)された人形と「良妻賢母」教育
 2 戦後日本における人形の身体の変化
 3 ファッションドールにおける「妊娠」した人形のディスクール
 4 あるべき「女児用人形」とは何か?

第5章 胎盤人形――見世物と医学と美術のはざま 池川玲子
 1 謎の「胎盤人形」
 2 模型から見る西洋助産史
 3 模型から見る日本の助産史
 4 考察、あるいは合成実験

第6章 日本美術に描かれた「妊婦」――中世の仏教思想と産む身体へのまなざし 池田 忍
 1 孕む身体の不在
 2 性愛と妊娠
 3 出産の光景

第7章 妊婦と人形がアートのうえで出会うまで 香川 檀
 1 〈禁断のエロス〉と寓意
 2 女性が描く/描かない〈自然としての妊娠〉
 3 ポストヒューマンの時代の〈義胎化〉――人工胎盤からラブドールへ

あとがき 藤木直実

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

55
妊娠という女性の経験をラブドールでアートにした菅実花の『ラブドールは胎児の夢を見るか?』を見たのは、昨年のヨコハマ・トリエンナーレ。そのマタニティ・フォトには突き出た乳房と腹部が大きく写し出されており、妊娠したラブドールを造形したとはいえ、男が立ち入ってはいけない神々しさを感じた憶えがある。本書はこの妊婦アートを中心に、妊娠の記念写真、文学、ファッションドール、「妊娠」した女児用人形などの妊娠表象をめぐってジェンダー視点から論じている。どちらかというと、内容は学術書に近い。2018/07/12

たまきら

27
美術において女性ヌードの歴史は長いけれど、妊婦はタブー視されてきた。それが変化していく過程を美術からポップカルチャーまで様々な視点で紹介し、考察していく女性によるなかなか大胆な女性論で、読みごたえがありました。女を美しい所有物として賞賛してきた男性にとっては、この未知の何かを生み出す古代からのパワーに満ちた体は恐怖以外の何者でもないのかもなあ…。面白かった!2019/05/12

3
友達にすすめられて。 ・とくにりかちゃん人形のところとマタニティフォト面白かった、「殺人出産」も! ・あと序章の、母、聖母、娼婦、少女それぞれの表象についての説明が図を使っていて分かりやすかった。 ・でも序章3の「表象は不在を補う」のところはよく分かんなかった… ・それぞれの章の文章が意外と長くなかったので気軽に読めた2021/08/11

ゾンビ男

1
この表紙写真を担当した菅花実さんの文章が一番好きでした。説得力そして芸術へ至るまでの道。ママタレに嫌悪感を覚えた僕でしたが、その嫌悪感がどこから来るものなのか今漸く理解できました。 特に序盤で女性(女)を少女・母・娼婦・聖母の四種類に分類し、それを土俵としてそこから論を展開していく……。土俵が分りやすく単純なおかげでそこから先の論も飲み込みやすかったです2019/02/27

hideko

1
妊婦に向けられる眼差しから、女性の足枷を考える。そして、これからを。2018/04/21

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